グローバルサウスの多角外交戦略:新興国の政治的自律性と変容する国際秩序

グローバルサウスの多角外交:インドネシアと中国の最新動向

国際社会においてグローバルサウスの主要新興国が多角的な外交戦略を展開し、政治的自律性を高める動きが顕著になっている。2026年3月5日の報道によると、インドネシアのプラボウォ大統領は3月下旬に日本を訪問する方向で調整が進められているとされた。これは経済・安全保障分野での協力強化の可能性を示唆する動きである。また、中国では2026年3月4日、全国人民代表大会において2026年から2030年を対象とする第15次5カ年計画が最終決定された。この計画では、経済成長の「量」よりも「質」を重視し、経済構造の最適化と質の向上を基盤としたGDP成長を目指す方針が示されている。これらの最新動向は、グローバルサウス諸国が国際社会で存在感を高めている現状を示している。

BRICSの拡大と国際秩序への影響力

BRICSは2026年時点で11の正式加盟国と10のパートナー国を擁する規模に拡大しており、世界人口の約49.5%、世界GDPの約40%、国際貿易の約26%を占めている。この経済的影響力の拡大により、BRICSは進化する多極的金融システムにおいて中心的な力としての地位を確立している。新開発銀行や外貨準備基金の設立、BRICS PAYや共通通貨構想の検討など、西側諸国と競合するイニシアチブを実施しており、G7ブロックの地政学的な代替手段とも考えられている。2024年10月の第16回BRICS首脳会議では、自国通貨での取引を促し脱ドル化を目指すBRICS決済システムが議題となった。しかし、加盟国の増加は一方で、米国との二国間関係や国際紛争における立場の違いにより意見の集約を一層困難にしている。特に脱ドル化の推進については、中国やロシアが強く進めたい意向を示す一方、米国との関係を重視するインドやインドネシアなどが消極姿勢を見せるなど、加盟国間での意見の相違も存在する。

主要新興国の多角外交戦略と政治的自律性

グローバルサウスの主要新興国は、それぞれ独自の多角外交戦略を展開し、政治的自律性を追求している。

南アフリカ: アフリカ諸国、グローバル・サウス、BRICS諸国との関係を重視する一方で、西側諸国との関係も良好に保とうとするバランス外交の姿勢が見られる。2026年2月6日には中国と「共通の繁栄のための経済連携に関する枠組み協定(CAEPA)」に署名し、対中輸出製品の無税アクセスや中国からの対南アフリカ投資促進を目指している。また、米国のアフリカ成長機会法(AGOA)再開を歓迎しつつも、延長が短期間に限定されていることや米南ア関係の悪化を懸念し、輸出市場の多様化を推進している。2026年2月12日、シリル・ラマポーザ大統領は施政方針演説で、急速に変化する世界情勢の中での国内改革加速の必要性を強調した。国内では2024年5月の総選挙で与党ANCが過半数割れし、連立政権が誕生している。

インドネシア: プラボウォ政権下のインドネシアでは、国家が経済と社会に深く関与する「戦略国家」への移行が見られ、人間中心の政策へのシフトが象徴的である。外交面では、2026年2月19日に米国と相互貿易協定に署名したが、インドネシア側に義務が偏った非対称な内容であるとの批判も存在する。これは、自国の利益を追求しつつ国際関係のバランスを取る同国の姿勢を示す一例である。

ブラジル: 多極化する国際秩序の中で独自の外交的立ち位置を模索しており、米中対立の狭間で中立性を維持しつつ、BRICSでの発言力強化や地域統合を推進している。ルーラ政権は域内協調の推進と並行して、域外の新興国との関係構築にも力を注ぎ、IBSA(インド・ブラジル・南アフリカ)対話フォーラムを主導した。2026年1月3日には、米国がベネズエラに軍事攻撃を実施した際、ルーラ大統領はこれを国際法違反と非難し、対話による解決に協力する用意があるとの立場を示し、政治的自律性を強調した。

グローバルサウスの多様性と今後の展望

グローバルサウスの各国は、国内の政治・経済状況を背景にそれぞれ異なる外交政策や経済政策を推進している。例えば、南アフリカでは連立政権が誕生し、中国は第15次5カ年計画で「質の高い成長」への移行を目指している。インドネシアは「戦略国家」への転換を進め、国家が経済・社会に深く関与する姿勢を強めている。中国は2025年1月に発足する米政権を念頭に、国際社会との交流を深め、改革、開放、質の高い発展、世界平和を追求する方針を示している。

グローバルサウス全体としての共通の目標としては、国際社会における影響力拡大や脱ドル化の模索が挙げられる一方で、その中には多様性や意見の相違も存在する。BRICSの脱ドル化に対する加盟国間の姿勢の違いはその典型である。これらの動向は、今後の国際秩序の多極化に寄与し、従来の国際政治・経済構造に新たな課題を提起すると考えられる。各国が自国の利益と国際社会での役割を両立させながら、いかにバランスの取れた外交を展開していくかが今後の焦点となる。

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Reference / エビデンス