国際海洋法秩序の動向:公海生物多様性条約の発効と未解決の課題

国際海洋法秩序の進展:公海生物多様性条約の発効と新たな課題

2026年1月17日、「国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する協定」(BBNJ協定、通称「公海生物多様性条約」)が発効しました。これは、国連海洋法条約(UNCLOS)を補完する画期的な国際条約であり、世界の海の約3分の2を占める国際水域における海洋生物多様性の保護と持続可能な利用を目的としています。本協定は、公海における海洋保護区の設定、環境影響評価の実施、海洋遺伝資源の公正な利益配分メカニズムの導入を可能にするものです。

日本は2025年12月12日に本協定の加入書を国連事務総長に寄託しており、この条約は海洋保全における大きな転換点としてその意義が強調されています。アントニオ・グテーレス国連事務総長も、この協定が「あらゆる人々にとってレジリエントで生産的な海洋を確保するために、重大なガバナンスのギャップを埋める」と述べています。

しかし、国際海洋法の運用においては依然として課題も存在します。例えば、米国は国連海洋法条約(UNCLOS)を批准しておらず、その状況下で深海底鉱物資源開発を巡る国際的な法的責任に関する議論が提起されています。

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Reference / エビデンス

  • Beijing's South China Sea militia fleet largest ever, report says 2026年3月18日の報告によると、中国の南シナ海における海上民兵艦隊は過去最大規模であり、中国人民解放軍の沿岸警備隊や海軍を補完し、南シナ海における中国の態勢を拡大している。中国の船舶は、他国の民間船や政府船に対し、体当たり、妨害、放水砲やレーザー照射を行い、不法な主権主張を裏付けているとされる。
  • China and the Philippines Hold the Eleventh Meeting of the Bilateral Consultation Mechanism on the South China Sea_Ministry of Foreign Affairs of the People's Republic of China 2026年3月28日、中国とフィリピンは泉州市で南シナ海に関する二国間協議メカニズム(BCM)の第11回会合を共同議長として開催した。両国は南シナ海の状況について率直かつ建設的な意見交換を行い、中国側はフィリピンの最近の海洋侵害、挑発、中傷に対し厳重な抗議を行った。両国は海洋法執行や海洋技術分野での協力を模索し、進展があった。
  • South China Sea | International Crisis Group 2026年3月7日、中国海軍艦艇がスプラトリー諸島の係争中のサビナ礁付近でフィリピン海軍艦艇に火器管制レーダーを照射したとマニラが3月20日に発表し、「警戒すべき挑発行為」と呼んだ。また、3月18日にはフィリピン沿岸警備隊が、中国空軍機が係争中のスカボロー礁付近でフィリピンの哨戒機に初めて挑戦したと報告した。これはフィリピン漁師が中国海警局と海上民兵船による嫌がらせを報告した後に行われた。3月24日には、中国海警局と海上民兵船がスカボロー礁付近でフィリピン漁船を嫌がらせしたとされる事態を受け、マニラは7隻の船舶を派遣した。
  • China reserves offshore airspace for 40 days without explanation: WSJ - Taipei Times 2026年3月27日から5月6日まで、中国は黄海と東シナ海の沖合空域を40日間予約し、通常軍事演習の警告に用いられる航空情報(NOTAM)を発出した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、このような長期間にわたる説明のない空域予約は「異例の措置」であり、特定の演習ではなく持続的な作戦準備態勢を示唆している可能性がある。
  • 'UNCLOS needs strengthening to meet 21st-century maritime challenges' - NewsGram 2026年3月26日、元インド外交官のサンジャイ・クマール・ヴェルマは、国連海洋法条約(UNCLOS)が21世紀の海洋課題に対応するために強化される必要があると指摘し、ホルムズ海峡、台湾海峡、南シナ海における事例を挙げ、法的権利が強制や一貫性のない実施によって脆弱になっていると述べた。
  • The UN Is Trying To Block America From Mining the Seabed | The Heritage Foundation 2026年3月26日、ヘリテージ財団は、国連が米国の深海底採掘を阻止しようとしていると指摘し、活動家や政府がUNCLOSの規定(第137条および第139条)を援用して米国企業の国際法的責任を主張していると述べた。米国はUNCLOSを批准していない。
  • High Seas Treaty ratified and due to enter into force in 2026 - Osborne Clarke 2025年9月23日、国連海洋法条約(UNCLOS)の下での協定である「公海生物多様性条約」(BBNJ協定)が、必要な60カ国の批准に達し、2026年に発効することが決定した。この条約は、国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用を目的としている。
  • Game-changing international ocean treaty comes into force | UN News 2026年1月17日、公海生物多様性(BBNJ)協定が発効し、世界の海洋の約3分の2を占める国際水域における海洋生物多様性の保護と持続可能な利用のための歴史的な一歩となった。この条約は、海洋保護区の設置、深海活動の規制、海洋資源の持続可能な利用、公正な利益配分を可能にする。
  • 南シナ海問題などの協議を再開 - フィリピン - ASEAN経済通信 2026年3月30日までにシンガポールメディアが報じたところによると、フィリピンと中国は、領有権を争う南シナ海問題を巡る高官協議を再開した。フィリピン外務省は、石油・ガス分野での協力に向けた初期的な手続きの検討や、エネルギー・肥料の供給問題についても対話したことを明らかにした。
  • 潮目を変える国際海洋条約が発効へ(UN News 記事・日本語訳) 2026年1月15日のUN News記事(日本語訳)によると、公海生物多様性(BBNJ)協定は、国内水域に属さない海域(公海)と国際海底域を対象とし、海洋と海底の開発や海洋保護に関するルールを定めてきた国連海洋法条約(UNCLOS)を基盤としている。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、この協定が「あらゆる人々にとってレジリエントで生産的な海洋を確保するために、重大なガバナンスのギャップを埋める」と述べた。
  • コラム 東シナ海における日中韓間の境界未画定海域と「自制義務」 - 内閣官房 東シナ海では、日本と中国・韓国の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の境界線が未画定であり、国連海洋法条約(UNCLOS)は「衡平な解決を達成するために国際法に基づいて合意により行う」と規定している。日本は中間線に基づく境界画定を主張する一方、中国と韓国は大陸棚の自然延長論に依拠した主張を行っている。
  • 「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」の発効を歓迎 - WWFジャパン 2026年1月17日、「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」が発効し、世界の海の3分の2を占める各国の管轄権外の海(公海および深海底)の生物多様性を守る国際条約として、海洋保全における大きな転換点となった。日本は2025年12月12日に条約加入の書簡を国連事務総長に寄託した。
  • 防衛大臣記者会見 2026年3月27日の防衛大臣記者会見で、陸上自衛隊健軍駐屯地への長射程ミサイル配備について言及があり、これは国家防衛戦略で重視されるスタンド・オフ防衛能力強化の一環であると説明された。
  • ホルムズ海峡は「オマーン側」から逃げられないのか?~海の車線問題~ - 山口物流株式会社 2026年3月30日の分析によると、ホルムズ海峡は最も狭い部分で幅約33kmしかなく、イランとオマーンの領海が重複するため公海部分が存在しない。国際ルールで定められた分離通航帯(TSS)は、海底地形の都合上、海峡を抜ける前後でイランの領海に複雑に入り込むルートとなっている。平時において沿岸国が一方的に海峡を封鎖することは国際法違反となる。
  • イランがアメリカ提案の15項目に否定的反応 イラン側「ホルムズ海峡の主権」「賠償金の支払い」など要求(2026年03月26日) - YouTube 2026年3月25日、イラン国営メディアは、米国がイランとの戦闘終結に向けて提示した「ウラン濃縮の禁止」や「ホルムズ海峡の開放」など15項目の条件に対し、イラン当局者が否定的な反応を示したと報じた。イラン側は、戦闘終結に向けた協議の条件として、ホルムズ海峡に対するイランの主権承認、全地域での攻撃停止、再び攻撃をしない保証、賠償金の支払いを要求している。
  • UN Security Council resolution to authorize the use of force [Super J Channel] (March 24, 2026) - YouTube 2026年3月24日、ロイター通信によると、国連安全保障理事会にホルムズ海峡を巡り武力行使を容認する決議案が提示された。この草案は、イランに対し航行を妨げる攻撃の即時停止を求め、ホルムズ海峡周辺での航行の安全を確保するため、各国に武力行使を含む「必要なあらゆる手段」を用いることを認める内容となっている。
  • ホルムズ海峡“封鎖”を非難 日本・イギリスなど6カ国首脳が共同声明(2026年03月20日) 2026年3月19日、日本、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダの6カ国首脳は共同声明を発表し、イランによる商船や石油・ガス施設を含む民間インフラへの攻撃、およびホルムズ海峡の事実上の封鎖を「最も強い言葉」で非難した。声明はイランに対し、攻撃の即時停止と国際法の順守などを求め、ホルムズ海峡の安全な航行確保に向け「適切な取り組みに貢献する用意がある」と表明した。