北米独占禁止法制の最新動向:カナダの合併閾値据え置きと米国の協力ガイドライン策定動向

北米独占禁止法・規制の最新動向:カナダの合併閾値据え置きと米国の新ガイドライン策定の動き

北米のテック企業を取り巻く独占禁止法と規制環境は、2026年に入り新たな動きを見せています。カナダ競争局は2026年3月2日、競争法に基づく合併事前届出の取引規模閾値を9,300万カナダドルに据え置くことを発表しました。これと並行して、米国では司法省(DOJ)独占禁止局と連邦取引委員会(FTC)が2026年2月23日、競争事業者間の協力および合弁事業に関する新たなガイドライン策定に向けた意見公募(RFI)を開始しました。これらの具体的な規制動向は、北米で事業を展開する巨大IT企業を含むテック企業のM&A戦略や事業提携に直接的な影響を与えるものと見られます。

カナダ:合併規制の安定と実務への影響

カナダ競争局は2026年3月2日、競争法に基づく合併事前届出の取引規模閾値を2026年も9,300万カナダドルに据え置くことを発表しました。この決定は、2021年以来インフレ調整を行わない政策の継続であり、その結果、名目上の取引額は同じであっても、より多くのM&A取引が強制的な事前届出制度の対象となる可能性が高まっています。テック企業がカナダでM&A戦略を推進する際、この閾値は取引の初期段階から厳密なコンプライアンス上の考慮事項となります。

さらに、カナダの競争法改正により、集中市場における合併は反競争的であると推定されるようになり、当事者は競争を実質的に減らさないことを証明する必要が生じています。これにより、M&A取引の審査期間が延長される可能性があり、テック企業の法務担当者は、取引完了までの時間軸や必要な情報開示について、より慎重な計画が求められます。

米国:競争事業者間協力ガイドラインの再構築と不確実性

米国では、2026年2月23日に司法省(DOJ)独占禁止局と連邦取引委員会(FTC)が、競争事業者間の協力および合弁事業に関するガイドラインを更新するための共同公開照会(RFI)を開始しました。このRFIは、2024年12月に2000年競争事業者間協力独占禁止法ガイドラインが撤回されて以来生じていた、競争事業者間協力に関するガイダンスの空白を解消することを目的としています。新たなガイドラインは、プロコンペティティブな活動と反競争的な活動の境界線をどのように定義するかが注目されており、テック企業は、この策定プロセスを通じて将来の協力関係構築における法的リスクを評価し、適切な関与を検討する必要があります。

米国における独占禁止法執行は、2026年も引き続き大規模デジタルテクノロジー企業に対して活発であり、特にAI技術の革新と競争に関する懸念が焦点となっています。また、合併関連では、2026年2月に連邦地方裁判所が2025年2月に施行されたHSR法に基づく新たな届出規則を無効としたため、現在は2025年以前の旧HSR届出様式が適用されています。FTCはこの決定を控訴中ですが、当局は旧様式での届出を受け付けており、テック企業のM&A担当者は現行の届出要件に留意する必要があります。

北米における規制アプローチの比較とテック企業法務担当者への示唆

北米の独占禁止法制は、カナダにおける合併事前届出閾値の据え置きという具体的な数値による安定した規制と、米国における競争事業者間協力ガイドラインの再構築に向けた意見公募という政策形成プロセスにおける不確実性の両面を呈しています。カナダでは、2021年以来インフレ調整されない閾値により、より多くのM&A取引が強制的な届出の対象となり、また競争法改正によって審査期間が延長される可能性があります。これにより、テック企業はM&A戦略において、取引の計画段階から厳格なコンプライアンスと十分な時間的余裕を見込む必要があります。

一方米国では、競争事業者間の協力に関するガイダンスが不在の期間を経て、新たなガイドラインの策定が進行中です。このプロセスは、テック企業がRFIに意見を提出することで、将来の競争環境と協力形態のあり方に影響を与える機会を提供します。しかし、ガイドラインが確定するまでの間は、どのような協力がプロコンペティティブと見なされるかに関して不確実性が伴い、特にAI技術などの革新的な分野における共同開発や提携においては、法務担当者による綿密な法的リスク管理が不可欠となります。米国ではHSR届出様式の暫定的な変更もあり、継続的な情報収集と専門家との連携が、北米で事業を展開するテック企業にとって喫緊の課題と言えるでしょう。

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Reference / エビデンス

  • Pre-merger Competition Bureau notification threshold to remain at $93M in 2026 2026年3月2日、カナダ競争局は、競争法に基づく合併事前届出の取引規模閾値が2026年も9,300万カナダドルに据え置かれることを発表しました。この決定は、2021年以来、インフレ調整を行わない政策の継続であり、これにより、より多くの取引が強制的な事前届出制度の対象となる可能性があります。
  • March Antitrust and Competition Bulletin: Top-of-Mind Global Antitrust Issues | Insights | Sidley Austin LLP 2026年2月23日、米国司法省(DOJ)独占禁止局と連邦取引委員会(FTC)は、競争事業者間の協力および合弁事業に関するガイドラインを更新するための意見を求める共同公開照会(RFI)を発表しました。この取り組みは、2024年12月に2000年競争事業者間協力独占禁止法ガイドラインが撤回されて以来の、競争事業者間協力に関するガイダンスの不在を解消することを目的としています。意見公募は2026年4月24日まで行われます。
  • After Federal Court Vacates HSR Rule, DOJ and FTC Seek Public Comment on the Future of Premerger Notification - Wiley Rein 米国では、2026年2月に連邦地方裁判所が2025年2月に施行されたHSR(Hart-Scott-Rodino)法に基づく新たな届出規則を無効としたため、現在は2025年以前の旧HSR届出様式が適用されています。FTCはこの決定を控訴していますが、当局は旧様式での届出を受け付けており、任意で無効となった新様式での提出も許可しています。
  • 2026 Antitrust Year in Preview: Big Tech - Wilson Sonsini 2026年には、米国における大規模デジタルテクノロジー企業に対する独占禁止法執行は引き続き活発であり、特にAI技術の革新と競争に関する懸念に焦点が当てられています。
  • Canadian M&A 2026: Certainty over Speed - Business Law Today from ABA カナダの競争法改正により、集中市場における合併は反競争的であると推定されるようになり、当事者が競争を実質的に減らさないことを証明する必要があるため、M&A取引の審査期間が延長される可能性があります。