東アジア広域経済圏の進展と地政学的リスク:中国の貿易戦略とASEANの統合動向

中国、広域経済圏構想を加速:全人代で貿易・投資協定推進を表明

2026年3月5日に開幕した中国の第14期全国人民代表大会第4回会議における政府活動報告では、より多くの二国間および多国間の貿易・投資協定の締結推進が表明されました。中国は、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的協定(CPTPP)への加入交渉を積極的に進める方針を示し、デジタル貿易およびグリーン貿易の発展を強調しています。

また、湾岸協力会議(GCC)、スイス、韓国、ニュージーランド、太平洋島嶼国、中央アジア、アフリカ諸国との自由貿易に関する協力の継続推進、ならびに「一帯一路」共同建設国を中心に投資協定交渉を加速する方針も示されました。これらの動きは、東アジアおよびそれ以遠の広域経済圏形成に向けた中国の戦略的意図を示すものであり、国際貿易の枠組みに大きな影響を与える可能性があります。

ASEANの経済統合戦略とインフラ投資の動向

2026年3月に開催された第57回ASEAN経済大臣会合では、ASEAN議長国であるフィリピンが策定した5つの経済戦略案が議論されました。これらの戦略は、貿易・投資のシームレスな域内統合深化、デジタル市場発展、中小零細企業(MSME)の能力強化、グリーン経済への移行加速、およびクリエイティブ経済の推進を目標としています。

特に、食品、エネルギー、重要鉱物、半導体といった潜在産業のサプライチェーン統合が重視されており、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)の締結・署名を通じたデジタル市場の発展が目指されています。また、ベトナム首相は、2026年から2035年の期間におけるASEAN経済共同体戦略計画の実施に関する行動計画を承認する決定を発令しました。この計画は、法制度や政策の改善、部門間の連携強化、ベトナム企業のASEAN市場活用支援に焦点を当てています。

中東情勢が東アジア経済に与える地政学的リスクと影響

2026年3月現在、中東情勢の激化、特に世界の石油の約25~30%、液化天然ガスの20%が通過するホルムズ海峡の事実上の封鎖は、東アジア地域のエネルギー安全保障とサプライチェーンに深刻な影響を与えています。この情勢は、世界のエネルギーシステムを脆弱にし、原油および液化天然ガス(LNG)価格の急騰を引き起こしています。

貿易ルートの混乱とエネルギー価格の高騰は、エネルギー輸入国である東アジア諸国にとって、エネルギーコストの急増という形で経済的打撃を与えています。具体的には、日本の原油輸入コストが月数千億円規模で増加する可能性が指摘されており、地域経済全体における地政学的リスクの重要性が改めて浮き彫りになっています。

[ Advertisement ]

Reference / エビデンス

  • 中国、2026年はより多くの貿易・投資協定締結を推進(中国) | ビジネス短信 - ジェトロ 2026年3月5日から開催された中国の第14期全国人民代表大会第4回会議において発表された政府活動報告では、より多くの二国間および多国間の貿易・投資協定の締結推進が表明されました。特に、デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)への加入交渉を積極的に進める方針が示され、デジタル貿易・グリーン貿易の発展も強調されました。また、湾岸協力会議(GCC)、スイス、韓国、ニュージーランド、太平洋島嶼国、中央アジア、アフリカ諸国との自由貿易に関する協力の継続推進、および「一帯一路」共同建設国を中心に投資協定交渉を加速する方針が示されました。
  • 第10回日韓財務対話の開催について(令和8年3月14日) 2026年3月14日に東京で開催された第10回日韓財務対話では、日本の片山さつき財務大臣と韓国の具潤哲(ク・ユンチョル)副総理兼財政経済部長官が、世界・地域経済、経済安全保障、多国間・二国間協力について意見交換を行いました。両大臣は、最近の急速な韓国ウォン安および日本円安に深刻な懸念を表明し、為替レートの過度な変動と無秩序な動きに対して、外国為替市場を注視し、引き続き適切な対応をとることを再確認しました。また、グローバル・サプライチェーンの強化が経済安全保障上の優先事項であるとの認識を共有し、重要鉱物に関するサプライチェーンの多様化を多国間イニシアティブ(RISEパートナーシップなど)を通じて一層推進することで合意しました。
  • ASEAN、2026年の経済戦略を策定、3月の経済大臣会合に提出(ASEAN、タイ) | ビジネス短信 2026年のASEAN議長国であるフィリピンが、2026年3月に開催予定の第57回ASEAN経済大臣会合で提案される5つの経済戦略を策定しました。これらの戦略は、貿易・投資のシームレスな域内統合の深化(特に食品、エネルギー、重要鉱物、半導体といった潜在産業のサプライチェーン統合)、デジタル市場の発展(ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)の締結・署名を通じて)、中小零細企業(MSME)の能力強化、グリーン経済と環境配慮への移行加速、クリエイティブ経済の推進を目標としています。また、ASEANカナダFTAおよびASEANインド物品貿易協定(AITIGA)改定の交渉を年内に完了させることを目指しています。
  • ボアオ・アジア・フォーラム(BOAO)2026開催 | Science Portal China 2026年3月24日から3月27日にかけて中国海南省・博鰲(ボアオ)で開催されたボアオ・アジア・フォーラム2026では、「共通の未来を創る:新たな情勢、新たな機会、新たな協力」をテーマに議論が行われました。アジア経済の見通しに関する報告では、アジア経済のGDPが世界経済に占める割合は2026年には49.7%へ上昇する見込みであり、アジアが引き続き世界経済成長の主要な原動力であると指摘されました。特に中国とASEANは地域経済を安定させる役割を強めており、中国は多様な市場やグローバル・バリューチェーンを結びつける重要な役割を果たしているとされました。
  • 2026年3月18日の世界経済ニュースのハイライト - Vietnam.vn 2026年3月18日、国際協力機構(JICA)はベトナム財務省と協力し、「グリーン成長と気候変動適応に向けたグリーン転換のためのプログラム融資」に関するワークショップを開催しました。この融資は500億円(約3億2000万米ドル)規模で、両国政府によって承認されており、2026年3月に署名される予定です。
  • ASEAN経済共同体戦略計画の実施 - Vietnam.vn ベトナム首相は、2026年から2030年および2031年から2035年の期間におけるベトナムでのASEAN経済共同体戦略計画の実施に関する行動計画を承認する決定を発令しました。この計画は、ASEAN経済共同体戦略計画の戦略的優先事項と2045年までのビジョンを実現することを目的とし、物品貿易、サービス貿易、投資、デジタル経済、グリーン経済などの分野における法制度、メカニズム、政策の改善、部門間の連携強化、およびベトナム企業のASEAN市場活用支援に焦点を当てています。
  • 2026年3月|国際情勢レポート - いい政治ドットコム 2026年3月の国際情勢レポートによると、中東情勢の激化、特にホルムズ海峡の事実上の封鎖は、世界のエネルギーシステムを脆弱にし、原油・LNG価格の急騰を引き起こしています。これは、エネルギー輸入国である東アジア諸国にとって、エネルギーコストの急増とサプライチェーンの混乱という深刻な打撃を与え、日本の原油輸入コストが月数千億円規模で増加する可能性が指摘されています。
  • 中東の戦争がエネルギー、貿易、金融に与える影響 中東での戦争は、世界の石油の約25~30%、液化天然ガスの20%が通過するホルムズ海峡の輸送を混乱させ、エネルギー価格の高騰とサプライチェーンの再編成を引き起こしています。これは、アジアの主要なエネルギー輸入国にとって燃料費や原材料費の高騰という形で経済的打撃を与え、食料や肥料価格の上昇も懸念されています。
  • インドネシア、財政赤字上限は維持、原油高とルピア安を懸念 - ジェトロ インドネシアのプラボウォ・スビアント大統領は2026年3月13日、原油価格の上昇とルピア安への懸念があるものの、2026年の財政赤字の上限をGDP比3%で維持する方針を示しました。インドネシアは原油および石油製品の純輸入国であり、原油価格が1バレル当たり92ドルに達した場合、財政赤字がGDP比で約3.6%まで拡大する可能性があると指摘されています。