日本政府、先端技術・産業政策の動向:持続的成長と競争力強化への取り組み

産業競争力強化に向けた法整備と投資促進策

日本政府は、国際経済情勢の変化、物価上昇、人口減少といった課題に対応するため、国内投資の促進、サプライチェーンの強靱化、産業用地・人材確保のための生活基盤維持を一体的に支援することを目的とした「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」を第221回国会に提出する予定です。

また、AIや半導体などの重点産業技術の明確化と、これらの研究開発を行う企業や研究拠点の支援を強化する「産業技術力強化法改正案」の策定も進められています。この改正案では、研究開発税制に「戦略技術領域型」という新しい枠組みの導入が検討されており、認定企業が重点産業技術の研究開発を行う場合、試験研究費の40%を法人税額から控除できる制度が設けられる方針です。

AI・半導体産業への大規模支援と具体的な進展

日本政府は、2030年度までに半導体・AI分野に10兆円以上の公的支援を投入し、10年間で官民合わせて50兆円超の国内投資を促し、約160兆円の経済波及効果を目指す「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を打ち出しています。これは一時的な景気対策ではなく、産業基盤再構築のための長期的な投資設計として位置づけられています。

具体的な進展として、2026年2月27日には、政府(情報処理推進機構:IPA)と民間企業32社が、次世代半導体開発を担うラピダスに対し、総額2,676億円の出資を実行しました。さらに、2026年3月3日には、キヤノンと日本シノプシスが、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業総合開発機構)の支援のもと、先端半導体製造技術開発プロジェクトに参画すると発表しました。このプロジェクトでは、キヤノンの画像処理技術と日本シノプシスの設計技術を融合し、2nm世代プロセス技術とチップレット技術を組み合わせた高性能・低消費電力の画像処理SoCを開発し、その設計・試作はラピダスに委託されます。

経済産業省は、2026年度から5年間で1兆円規模の国産AI開発支援を検討しており、特に現実世界で動作する「フィジカルAI」(AIロボット)の社会実装と産業競争力への結びつきを重視しています。

産業政策の持続可能性を支えるその他の取り組み

政府は、物流の持続可能性確保と輸送力不足解消を目指し、「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」の策定を進めています。この大綱は、2030年度までの「集中改革期間」において、物流効率化、商慣行見直し、DX・GX推進、物流人材の地位・能力向上、労働環境改善などを柱とする方針です。

経済産業省は、物価高を乗り越え「強い経済」を実現するため、2026年3月を「価格交渉促進月間」と位置づけ、中小企業の価格転嫁と取引適正化に向けた取り組みを要請しています。受注企業がコスト上昇額のうち価格転嫁できた割合が依然として5割程度であることから、一層の転嫁率向上が課題として認識されています。

また、国土交通省は2026年3月3日、建設産業政策のあり方を議論した有識者勉強会の取りまとめを公表しました。この報告書では、労働力不足に対応するため「次元の異なる対応」が必要であると指摘し、「人を大事にする」産業を目指す方向性を示しています。具体的には、月給制の推進、技術者制度の見直し、重層下請構造の改善などが提言されています。

[ Advertisement ]

Reference / エビデンス