中東緊迫化とアフリカ資源ナショナリズム:グローバルサウスの資源政策と投資環境の変容
中東情勢緊迫化とグローバルサウスへの影響:エネルギー市場の激変
2026年2月28日の米国によるイラン攻撃に端を発する中東情勢の緊迫化は、3月上旬にはホルムズ海峡の事実上の封鎖へと発展しました。この事態により、原油価格は一時1バレル100ドル超に急騰し、天然ガスや石炭価格も顕著に上昇、液化天然ガス(LNG)価格も連動して上昇しています。市場ではリスクオフの動きが強まり、エネルギーの中東依存度が高いアジア新興国を中心に金融市場は混乱を来しており、アフリカ、中東、中南米のエネルギー輸入国では輸入額の増加が財政を圧迫しています。日本においても原油輸入コストは月数千億円規模で増加し、電力・ガソリン・プラスチック原料の急騰が懸念されます。中東での戦争は、世界的に物価上昇と成長鈍化を招く可能性が指摘されており、経済産業省は、供給に影響が出ている石油製品ナフサについて、中東以外からの代替調達の方向性を示しています。
資源ナショナリズムの台頭:アフリカ資源国の新たな主張
2026年2月9日から12日に開催された「アフリカン・マイニング・インダバ2026」では、アフリカ資源国の存在感が強く示されました。ザンビア大統領は鉱業セクターの透明性確保と国内加工の推進を強調。コンゴ民主共和国鉱山相は、米国との重要鉱物枠組みが具体化しない場合の他パートナーとの議論に言及しました。また、南アフリカ鉱物・石油資源相は、投資家がリターンを求めるのは当然だが、成長の果実は労働者や地域コミュニティーと共有されるべきであると訴え、アフリカ全体での統一的な対応の必要性を指摘しました。このイベントでは、世界的な地政学リスクの高まりやエネルギー転換に伴う重要鉱物需要の急拡大を背景に、サプライチェーンの再構築、資源ナショナリズムの動向、官民連携の実効性といったテーマが議論されました。アフリカ各国は、資源を単なる採掘で終わらせず、域内での付加価値化と工業化を進め、官民連携を通じて資源主権を確立し、自国の利益のために活用していく方針を表明しています。
変動する投資環境:リスクと機会の多角化
中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の高騰は、グローバルサウスの新興国にインフレリスクの増大と財政圧迫という形で複合的な影響を与えています。一方で、ブラジルのように原油の純輸出国である国々は、対外的なエネルギー依存度が低く、原油高が経済を支える要因となり、堅調に推移していると評価されています。EYの2026年鉱業・金属セクター調査では「事業運営の複雑さ」が最大のリスクとして浮上し、地政学的リスクは順位を下げたものの、関税や輸出規制が重要鉱物のサプライチェーンに与える影響や、貿易の流れが妨げられることによる地政学的な力関係の変化の可能性が指摘されています。このような変動する環境下で、資源の安定供給を目指す代替調達先の開拓や、アフリカ資源国が訴える国内での付加価値化・工業化への投資は、新たな事業機会となり得る状況です。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- 国連、情勢悪化によりアラブ地域で1500億ドルの損失と報告、世界銀行は支援を表明 - ジェトロ 国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)は3月19日、2月末以降の中東情勢悪化により、アラブ諸国の1カ月間の損失額が1,500億ドルに達し、地域GDPの3.7%に相当する可能性があると報告しました。ホルムズ海峡を通る船舶の通航量急減により、貨物輸送の混乱による損失は1日あたり約24億ドルと推定されています。エネルギー輸入国では原油価格が1バレル100ドルに達した場合、財政圧力が強まる見込みです。
- 先月のマーケットの振り返り(2026年3月) | 三井住友DSアセットマネジメント 2026年3月、中東での紛争激化とそれに伴う石油・ガス価格の上昇、調達難により、世界の主要株式指数は下落しました。原油価格の高騰は、日本やインドなど石油・ガスの中東依存度が高い国の株価に大きな影響を与えています。
- 原油高・リスクオフ下での新興国の耐性は | 大和総研 2026年2月28日の米国によるイラン攻撃以降、原油や天然ガス、石炭価格が顕著に上昇し、市場ではリスクオフの動きが強まり、3月27日時点で新興国通貨は対ドルで全面安となりました。主要新興国の中で、ブラジルは原油の純輸出国であり、対外的なリスクに対するバッファーが厚いため、最も打撃が小さいと評価されています。
- 2026年3月|国際情勢レポート - いい政治ドットコム 2026年3月、米・イスラエル共同作戦によるイラン最高指導者殺害を受け、イランが報復を宣言し、ホルムズ海峡を事実上封鎖しました。これにより原油価格は一時1バレル100ドル超に急騰し、LNGも連動して上昇。日本の原油輸入コストは月数千億円規模で増加し、電力・ガソリン・プラスチック原料の急騰が懸念されています。
- 2026年3月27日の世界経済ニュースのハイライト - Vietnam.vn 2026年3月27日、赤澤良政経済産業大臣は、中東産油国が日本国内に共同で備蓄していた石油の放出を開始したと発表しました。マッコーリー・グループは、中東紛争が2026年6月まで続き、ホルムズ海峡が封鎖された場合、原油価格が過去最高の1バレル200ドルに達する可能性があると予測しています。
- 中東の戦争がエネルギー、貿易、金融に与える影響 中東での戦争は、エネルギー、貿易、金融に影響を及ぼし、物価の上昇と成長の鈍化を招く可能性があります。アフリカ、中東、中南米のエネルギー輸入国は、輸入額の増加により財政がひっ迫しています。
- Xinhua Silk Road:グローバルサウスの金融関係者が中国東部の寧波を訪問、産業と文化の革新を探る - 共同通信社 2026グローバルサウス金融フォーラムに参加する政府関係者、金融幹部、ビジネスリーダーから成る代表団が、2026年4月4日に中国東部の浙江省寧波市を訪問し、先進技術施設や無形文化遺産関連施設を視察しました。
- EY調査、2026年鉱業・金属セクター ビジネスリスク&オポチュニティ トップ10 を発表 EYの2026年鉱業・金属セクター調査によると、「事業運営の複雑さ」が最大のリスクに浮上しました。地政学的リスクは7位に順位を下げたものの、関税と輸出規制が重要鉱物のサプライチェーンに影響を与え、貿易の流れが妨げられることで地政学的な力関係が変化する可能性が指摘されています。
- 日米首脳会談実施、日米合意に基づく第2陣の投資プロジェクトを発表、重要鉱物でも協力強化(日本、米国) | ビジネス短信 - ジェトロ 2026年3月19日、日米首脳会談で「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」が発表されました。両政府は今後、重要鉱物輸入のためのプライス・フロア(最低価格)策定などを議論し、米国企業のレアアースリサイクルプロジェクトなど13件の具体的な案件を支援します。
- 「マイニング・インダバ2026」開催、アフリカ資源国の存在感高まる(コンゴ民主共和国 - ジェトロ 2026年2月9日から12日に開催された「アフリカン・マイニング・インダバ2026」では、ザンビア大統領が鉱業セクターの透明性確保と国内加工の推進を強調し、コンゴ民主共和国鉱山相は米国との重要鉱物枠組みが具体化しない場合の他パートナーとの議論に言及しました。南アフリカ鉱物・石油資源相は、投資家がリターンを求めるのは当然だが、成長の果実は労働者や地域コミュニティーと共有されるべきだと述べ、アフリカ全体での統一的対応の必要性を指摘しました。
- 新興国・資源国通貨Focus - ソニーフィナンシャルグループ 2026年3月以降、金融市場全体でリスク許容度が収縮する中、新興国・資源国通貨は米ドル主導で動きました。ブラジルレアルは対外エネルギー依存度が低く、原油高がサポート要因となり堅調に推移しています。
- カレント・トピックス - JOGMEC JOURNAL 「Mining INDABA 2026」では、世界的な地政学リスクの高まり、エネルギー転換に伴う重要鉱物需要の急拡大、アフリカ各国における資源政策の変化が重なる中で、サプライチェーンの再構築、資源ナショナリズムの動向、官民連携の実効性といったテーマが議論されました。アフリカは、鉱業を単なる採掘にとどめず、域内での付加価値化と工業化へ進むべきだと訴え、官民連携を通じて資源主権を確立し、自らの利益のために資源を活用すべきだと呼びかけました。
- イラン情勢悪化も中国経済は良好さを維持、持続性には疑問 ~内需拡大を掲げるも、雇用不安にエネルギー価格上昇、実質的な人民元高の影響にも要注意~ | 西濵 徹 - 第一生命経済研究所 米国とイスラエルによるイランへの軍事行動を機に中東情勢は緊迫化し、ホルムズ海峡の事実上の封鎖で原油の供給懸念が高まっています。エネルギーの中東依存度が高いアジア新興国を中心に金融市場が混乱しています。
- 【Explanation】Iran begins releasing its national oil reserves, while rejecting conditions for end... - YouTube 中東情勢の緊迫化に伴う石油の供給不足を受け、日本政府は2026年3月26日から愛媛県にある備蓄基地から石油の国家備蓄の放出を開始しました。
- 石油製品「ナフサ」代替調達を倍増へ 中東以外のアメリカなどから - ニュース|KBC九州朝日放送 中東情勢の緊迫化で供給に影響が出ている石油製品「ナフサ」について、経済産業省は中東以外からの代替調達が倍増する見込みだと明らかにしました。4月の中東以外からの調達は90万キロリットルになる見込みで、平時より倍増し、このうち3分の1はアメリカから、その他ペルー、アルジェリア、オーストラリアなどにも調達先を広げています。
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