通貨多極化の現況:非米ドル決済網の進展と地政学的変動が示唆するグローバル金融秩序

非米ドル決済網の新たな動き:NeUSDの市場参入

2026年3月3日20:00(日本時間)、デジタルアセットプラットフォーム「NeUSD」は世界の流動性市場で取引を開始しました。この動きは東南アジア金融機関との連携を基盤とし、伝統金融とWeb3経済圏を接続するハイブリッド型金融モデルの実装を段階的に進めるものです。NeUSDは米ドル、ユーロ、日本円など主要通貨との接続を視野に入れており、非米ドル決済網構築と通貨多極化に向けた具体的な進展として注目されています。

グローバルサウスにおける脱ドル化の現状とBRICSの取り組み

グローバルサウス諸国は米ドルへの依存度を低減する動きを継続しており、特にBRICS+諸国は自国通貨での決済拡大や代替決済システムの構築を進めています。具体的な取り組みとして、BRICS+はブロックチェーンベースの決済システム「BRICS Bridge」の開発を進めており、これは中央銀行デジタル通貨(CBDC)での決済を想定しています。また、域内決済網「BRICS Pay」の整備も加速させています。一方で、BRICS共通通貨の導入に関しては、2025年3月の時点でインドがドルに代わる政策はないと表明するなど、加盟国間で多様な見解が見られます。現在の焦点は、単一通貨ではなく、既存の各国CBDCを相互運用可能なインフラを通じて連携させる実用的なシステム構築にあります。こうした動きの中、2025年12月から2026年3月にかけて、中東地域における非ドル建てクロスボーダー取引は18%から31%へ、アジア地域では35%から42%へと増加しました。

中央銀行デジタル通貨(CBDC)の国際決済における役割拡大

世界各国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の開発と実証実験が加速しており、国際決済におけるその役割拡大が注目されています。中国のデジタル人民元は、2026年1月以降、その位置づけが現金通貨のデジタル版から銀行預金のデジタル版に変更され、世界で初めて利息付与が開始されました。また、多中央銀行CBDCプラットフォーム「mBridge」の利用も進んでおり、2025年後半にはUAEが中国との間でmBridgeを利用した取引を開始し、サウジアラビアも2024年にこのプロジェクトに参加しています。さらに、インド準備銀行(RBI)はアジアおよび欧州の中央銀行とクロスボーダーCBDC決済の相互運用性に関する協議を深めています。日本銀行の植田和男総裁も2026年3月には、ブロックチェーン技術を用いた「中央銀行マネー」の海外送金への活用を検討していることを表明するなど、CBDCが国際決済の効率化と多極化に果たす潜在的な役割は拡大しています。

地政学的リスクと米ドルの安全資産としての地位

2026年2月下旬から3月上旬にかけての中東情勢は緊迫化しました。2026年2月28日に米国・イスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、武力衝突が激化し、紛争長期化への懸念から投資家の不安心理が高まりました。2026年3月4日の市場では、前日の米株安に加え、イランによる湾岸諸国への攻撃継続を受けた原油高が影響し、日経平均は大幅に続落、アジア全体で相場が急落し、世界的なリスクオフモードとなりました。この地政学的リスクの高まりは、原油価格の急騰と市場の不安定化を招き、結果としてドルインデックス(DXY)が上昇するなど、「有事のドル買い」が進展しました。

長期的な視点では、脱ドル化の傾向も示されています。SWIFT経由の国際決済における米ドルのシェアは、2025年12月の47.5%から2026年3月には43.8%に低下しました。また、2026年第1四半期には、米ドルの準備資産シェアが約56.1%に減少しています。しかし、短期的な危機においては、米ドルが依然として主要な安全資産として機能するという二面性が浮き彫りになりました。米ドルは、安定した政治システム、法の支配、予測可能な制度、約30兆ドルに及ぶ米国債市場による潤沢な流動性、そして広範なネットワーク効果により、国際貿易において信頼性、流動性、速度を提供し続けています。世界の貿易請求書の40〜54%でドルが使用され、SWIFT決済の約半分、全FX取引の89%を占め、各国は準備資産の56%以上をドルで保有しており、その地位を支えています。

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Reference / エビデンス