グローバル・ミニマム課税「ピラー2」の最新動向:OECD「Side-by-Sideパッケージ」と各国の法制化進展
グローバル・ミニマム課税:OECD「Side-by-Sideパッケージ」公表後の各国動向と実務課題
2026年1月5日、OECDはグローバル・ミニマム課税に関する「Side-by-Sideパッケージ」を公表し、国際法人税制は新たな局面を迎えました。これは、多国籍企業グループに最低15%の実効税率を課す「第2の柱(Pillar Two)」ルールの協調的な適用を目指すもので、各国の法制化や多国籍企業の実務に大きな影響を与えています。2026年3月上旬現在、このパッケージを受けて、日本や韓国では国内法制への組み込みが進んでおり、多国籍企業は実務上の対応を迫られています。
OECD「Side-by-Sideパッケージ」の主要内容と戦略的意義
2026年1月5日にOECDおよびBEPS包摂的枠組みが合意した「Side-by-Sideパッケージ」は、グローバル・ミニマム課税の円滑な導入を支援するための重要なガイダンスです。このパッケージには、簡素化された実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間CbCR(国別報告書)セーフハーバーの1年延長、実体ベースの租税優遇措置セーフハーバー、Side-by-Side(SbS)セーフハーバー、およびUPE(最終親会社)セーフハーバーといった複数のセーフハーバーが含まれています。このパッケージの最大の戦略的意義は、異なるミニマム課税システム、特に米国税制との共存を明確化し、グローバル・ミニマム課税の適用におけるコンプライアンス負担軽減と公平性の維持を目指す点にあります。
各国におけるピラー2法制化の進展:日本、韓国の事例
「Side-by-Sideパッケージ」の発表後、各国ではピラー2ルールを国内法制に組み込む動きが具体化しています。日本では、2026年度税制改正において、2026年1月のSide-by-Sideパッケージおよび2025年1月のOECD行政ガイダンスの側面を組み込む形で、ピラー2制度の改正が行われました。これにより、軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)が、2026年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用されることになっています。また、韓国では2026年1月16日付で2025年改正税法に関する施行令改正案が発表され、国内追加税(QDMTT)に関する詳細な施行規定が整備されました。OECDの合意内容に基づき、移行期適用免除期限も1年延長されています。
グローバル・ミニマム課税の円滑な適用に向けた課題と展望
グローバル・ミニマム課税の導入は、多国籍企業にとって新たな実務上の課題を提起しています。各国での法制化の複雑さや、異なる国内税制との整合性確保は引き続き重要な課題です。今後の国際的な協力が不可欠であり、税務政策研究者にとっては、各国の制度設計の進展や、多国籍企業の実務対応の動向が引き続き注目される分野となるでしょう。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- KPMG Week in Tax: March 9 – 13, 2026 2026年3月13日、OECDのビジネス諮問委員会(BIAC)は、15%のグローバル・ミニマム課税の円滑な適用を確実にするため、ピラー2の準備計画の「継続的な調整」を求めました。
- oecdpillars.com – Independent Insights and Analysis on the OECD Two Pillars Solution 2026年3月31日、日本は2026年税制改正パッケージを制定し、2026年1月のSide-by-Side税制パッケージおよび2025年1月のOECD行政ガイダンスの側面を組み込む形で、ピラー2制度の改正を行いました。 また、オーストラリアは2026年3月25日に、OECDのDMTTに関する行政ガイダンスの側面を組み込むためにピラー2ルールを修正する「Taxation (Multinational—Global and Domestic Minimum Tax) Amendment (2026 Measures No. 1) Rules 2026」を発行しました。
- Global Minimum Tax - OECD 2026年1月、BEPS包摂的枠組みは、デジタル化されグローバル化された経済におけるグローバル・ミニマム課税の協調的な運用方法を定める「Side-by-Sideパッケージ」に合意しました。この文書には、多国籍企業(MNE)および税務当局のコンプライアンス負担を軽減する簡素化された実効税率セーフハーバーや、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長などが含まれています。
- Pillar Two Country Tracker - PwC 2026年1月5日、OECDは、BEPS包摂的枠組みの147メンバーが、ピラー2グローバル・ミニマム課税ルール(GloBEルール)に関する新たな行政ガイダンスパッケージに合意したことを発表しました。この「Side-by-Sideパッケージ」には、恒久的な簡素化された実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実体ベースの租税優遇措置セーフハーバー、Side-by-Side(SbS)セーフハーバー、UPEセーフハーバーが含まれます。
- グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ PwC税理士法人は、2026年3月6日にグローバル・ミニマム課税に関する実務対応ガイドを発行し、日本企業が2024年度から求められる決算・申告対応のポイントを整理しました。
- グローバル・ミニマム課税に関する令和7年度税制改正が施行(UTPR・QDMTT) | EY Japan 日本の令和7年度税制改正により、グローバル・ミニマム課税の軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)が、2026年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用されることになりました。
- Global Anti-Base Erosion Model Rules (Pillar Two) - OECD 2026年1月、OECDは、簡素化されたETRセーフハーバーや移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長を含む「Side-by-Sideパッケージ」を公表しました。
- グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省 日本の財務省は、2026年1月5日に合意されたグローバル・ミニマム課税に係る国際合意(Side-by-Sideパッケージ)を踏まえ、2026年度税制改正において国内制度の見直しを行うことを発表しました。
- Pillar two and the new global tax disorder | International Tax Review 2026年1月に公表されたOECDの「Side-by-Sideガイダンス」は、グローバル・ミニマム課税プロジェクトの転換点を示しており、異なるミニマム課税システムが共存することを容認しました。これは、特に米国を念頭に置いたもので、米国の国内制度が同等のミニマム課税結果を達成する場合、他の国はUTPRによる追加課税を控えるというものです。
- Pillar Two Implementation – oecdpillars.com オーストラリアは2026年3月25日に、OECDのDMTTに関する行政ガイダンスの側面を組み込むためにピラー2ルールを修正する「Taxation (Multinational—Global and Domestic Minimum Tax) Amendment (2026 Measures No. 1) Rules 2026」を発行しました。
- 2025年税法改正に伴う施行令改正案(国際租税分野) 韓国では、2026年1月16日付で2025年改正税法に関する施行令改正案が発表され、グローバル・ミニマム課税(Pillar 2)の国内追加税に関する詳細な施行規定が整備されました。また、OECDグローバル・ミニマム課税の合意内容(Side-by-Side Package)に基づき、移行期適用免除期限が1年延長されました。
- 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International 日本の2025年度税制改正では、「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」について、OECDから公表されたガイダンス等を踏まえた見直しが行われました。
- OECD、第2の柱グローバル・ミニマム課税に関するSide-by-Sideパッケージを公表:詳細解説 - EY 2026年1月5日、OECDは「Side-by-Sideシステム」に関する包括パッケージについて、包摂的枠組みが政治的・技術的な合意に達したことを公表し、新たな4つのセーフハーバー導入とCbCRセーフハーバーの1年延長を示しました。
- グローバル・ミニマム課税 - 東京共同会計事務所 日本では、グローバル・ミニマム課税の軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)が、令和7年度税制改正で法制化され、2026年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用されます。
- BEPS2.0グローバル・ミニマム課税の仕組みと日本の法制化 - 響き税理士法人 日本では、年間総収入額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業グループに対し、2024年4月1日以降に開始する事業年度から「所得合算ルール(IIR)」が、2026年4月1日以降に開始する事業年度から「軽課税所得ルール(UTPR)」と「国内ミニマム課税(QDMTT)」がそれぞれ適用されます。
- OECDのPillar Two(GloBE)Side-by-Side Package(2026)が出た - J-TaxNotes 2026年1月5日、OECDはグローバル・ミニマム課税の実施に関する行政ガイダンスとして「Side-by-Sideパッケージ」を公表しました。このパッケージは、簡素化措置、実体ベースの租税優遇措置セーフハーバー、Side-by-Sideシステム(SbSセーフハーバー、UPEセーフハーバー)、および適格国内ミニマム追加課税制度の保護を強化する5つの主要な構成要素を含んでいます。
- OECDのSide-by-Sideパッケージ:第2の柱に関する3種類のセーフハーバー(簡素な実効税率、移行期間CbCR、租税優遇措置) | 著書/論文 | 長島・大野・常松法律事務所 2026年1月5日にOECDと包摂的枠組みが公表した「Side-by-Sideパッケージ」は、ピラー2と米国税制の共存を明確化することを最大の目的としています。このパッケージには、簡素な実効税率セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベースの租税優遇措置に関するセーフハーバーの3種類のセーフハーバーが含まれており、日本の2026年度税制改正にも含まれる旨が1月23日に閣議決定されました。
- 国際最低法人課税見直しで145カ国超が合意...トランプ反発のため米企業は例外 2026年1月5日、OECDと米財務省は、15%の法人税適用などを規定した国際最低課税に関し、米企業を例外とする見直し案を受け入れることで世界145カ国超が合意したと発表しました。これは、多国籍企業に不利益をもたらすとしてトランプ米大統領が反発したことを踏まえたものです。
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