グローバルサウスにおける地域経済統合の進展と貿易障壁の最新動向
EU・メルコスール協定の進展:グローバルサウスの地域統合を加速
欧州委員会は2026年2月27日、EU・メルコスール暫定貿易協定(iTA)の暫定適用を進める意向を発表しました。これは、アルゼンチンとウルグアイが2026年2月26日に批准手続きを完了したことを受けたものです。25年以上にわたる交渉を経て成立したこの協定は、7億人以上の人口を結びつけ、世界最大級の自由貿易圏を創出する可能性を秘めています。メルコスールはグローバルサウスの主要な地域経済共同体の一つとして、貿易自由化に向けた具体的な進展を示しています。暫定貿易協定の貿易規定は、理事会が暫定適用に同意し、少なくとも1つのメルコスール国が批准を完了すれば、完全な批准完了前に暫定適用を開始できるとされています。
WTOと貿易障壁の現状:グローバルサウスの視点
グローバルな貿易環境においては、貿易障壁の存在が引き続き課題となっています。2026年2月末時点で、世界の貿易の72%が最恵国待遇(MFN)原則に基づいて行われています。2025年には関税に変動が見られましたが、こうした状況下でも貿易障壁は依然として存在しており、国際貿易専門家の間でその動向が注視されています。
地域経済共同体の発展:AfCFTAとBRICSの役割
グローバルサウスの地域経済共同体は、統合の深化と貿易の促進において重要な役割を担っています。アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)においては、2023年にアフリカ域内貿易が総貿易の16.6%に増加しました。アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)は、2026年までに域内貿易融資を400億ドルに倍増させる目標を掲げており、域内貿易のさらなる活性化を目指しています。
一方、BRICSは一枚岩の地政学的同盟ではなく、実用的な経済プラットフォームとして機能しています。2026年のインドのBRICS議長国テーマは「レジリエンス、イノベーション、協力、持続可能性の構築」です。インドはデジタル公共インフラ(DPI)を主要な柱として推進し、越境決済の連携やデジタルIDフレームワークの拡大を通じて、特にグローバルサウスの貿易、金融包摂、サービス提供をよりシームレスにすることを目的としています。
貿易障壁の推移とグローバルサウスへの影響
近年、国際貿易における障壁の動向は複雑な様相を呈しています。米国では、2025年4月にほぼ全ての輸入品に10%の基準関税が導入され、一部の品目では50%を超える報復措置も取られました。これにより、米国の実効関税率は一時的に約22.5%まで上昇しましたが、2026年初頭には約12%に低下しました。さらに、2026年2月には米国最高裁判所が2025年に導入された多くの関税の法的根拠を無効にする判断を示しています。
一方、中国は2026年3月に採択された第15次五カ年計画において、グローバルサウスとの経済関係を深化させる方針を打ち出しています。「一帯一路」構想を通じて市場アクセスを拡大し、サプライチェーンの連携を強化することで、新たな成長回廊の構築を目指しています。
国際機関の予測によると、2026年の世界貿易成長率は鈍化すると見られています。世界貿易機関(WTO)は商品貿易量の成長率が1.9%に減速すると予測しており、商品とサービス貿易の合計成長率も2025年の4.7%から2.7%に減速すると見込んでいます。しかし、アジア、アフリカ、南米といったグローバルサウスの地域では、より速い輸入・輸出成長が予測されています。長期的なトレンドとしては、南南貿易(途上国間の貿易)が1995年の約0.5兆ドルから2025年には6.8兆ドルへと急増しており、途上国の輸出の57%が他の途上国向けとなるなど、世界の貿易成長の主要な原動力として台頭しています。
[ Advertisement ]Reference / エビデンス
- Geopolitics and the geometry of global trade: 2026 update - McKinsey 2025年には米国の関税が大幅に上昇し、2024年後半の2.4%から2025年4月初旬には約22%に跳ね上がったが、年末までに一連の貿易協定と政策調整により約15%に減少した。2026年初頭の時点では、平均実効関税率は約12%であった。2026年2月には、米国最高裁判所が2025年に導入された多くの関税の法的根拠を無効にした。ASEANを含む新興国は、再構築されたサプライチェーンにおいて役割を拡大している。
- BRICS 2026: Strategic Autonomy and Economic Integration in a Fragmenting Global Order BRICSは一枚岩の地政学的同盟ではなく、実用的な経済プラットフォームとして機能している。インドのBRICS議長国テーマは「レジリエンス、イノベーション、協力、持続可能性の構築」であり、デジタル公共インフラ(DPI)を主要な柱として推進し、新興市場全体でのデジタル協力の拡張を目指している。これは、越境決済の連携、デジタルIDフレームワーク、公共デジタルレールの拡大を通じて、特にグローバルサウスの貿易、金融包摂、サービス提供をよりシームレスにすることを目的としている。
- The African Continental Free Trade Area as a Strategic Buffer Against Geopolitical Volatility and Global Trade Fragmentation | Burke & Company Insights アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の実施により、2023年にはアフリカ域内貿易が総貿易の16.6%に増加した。アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)は、2026年までに域内貿易融資を400億ドルに倍増させる計画である。
- European Union says Mercosur free trade deal will start May 1, linking 700 million people 欧州連合とメルコスール間の画期的な自由貿易協定は、25年以上にわたる交渉を経て、2026年5月1日に開始される予定である。この協定は7億人以上の人々を結びつけ、世界最大級の自由貿易圏を創出する。
- EU to provisionally apply EU–Mercosur Interim Trade Agreement pending CJEU opinion 2026年2月27日、欧州委員会はEU・メルコスール暫定貿易協定(iTA)の暫定適用を進めると発表した。アルゼンチンとウルグアイが2026年2月26日に批准手続きを完了し、パラグアイ上院が2026年3月4日にiTAを全会一致で承認したことを受け、早ければ2026年5月にも暫定適用が開始される可能性がある。ブラジルも2026年3月4日に連邦上院で承認した。
- FG Targets MSMEs' Access To $3.5trn AfCFTA Market, Launches Cross-Border Digital Payments Report - The State House, Abuja ナイジェリア連邦政府は2026年3月30日、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の下での越境デジタル決済と本人確認に関する報告書を発表し、中小零細企業(MSMEs)が3.5兆ドルのAfCFTA市場にアクセスするための貿易機会を解き放つよう関係者に促した。
- EU-Mercosur trade deal to apply provisionally from May 2026 | Irish Legal News 欧州委員会は、メルコスール条約の法的保護者であるパラグアイに「口上書」を送付することで、暫定適用に必要な最終的な手続きを完了した。暫定貿易協定(ITA)は、批准手続きを完了し、3月末までにEUに通知した全てのメルコスール諸国との間で5月1日から暫定的に適用される。アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイは既にこの手続きを完了しており、パラグアイも最近協定を批准し、間もなく通知を送付する予定である。
- EU Mercosur Trade Agreement: What Businesses Must Know for 2026 - Altios 暫定貿易協定(iTA)の貿易規定は、理事会が暫定適用に同意し、少なくとも1つのメルコスール国が自国の批准を完了すれば、完全な批准が完了する前に暫定的に適用を開始できる。
- National workshop on use of regulatory audit report on services trade under AfCFTA ECOWAS委員会は、ドイツ国際協力公社(GIZ)と協力し、2026年3月24日から26日にかけてコトヌーで、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の下でのサービス貿易に関する規制監査報告書の活用に焦点を当てた国内ワークショップを開催した。
- 10 trends shaping global trade in 2026 | eTrade for all 南南貿易(途上国間の貿易)は、世界の貿易成長の主要な原動力となっている。1995年から2025年にかけて、南南の商品輸出は約0.5兆ドルから6.8兆ドルに急増した。現在、途上国の輸出の57%が他の途上国向けであり、1995年の38%から増加している。
- brics 2026 インドは2026年1月1日にBRICSの議長国に就任し、そのテーマは「レジリエンス、イノベーション、協力、持続可能性の構築」である。
- Sluggish global economic growth seen to hold back trade in 2026—UNCTAD 国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2026年の世界経済成長率は2.6%と低調に推移すると予測されており、途上国(中国を除く)の成長率は4.2%に若干減速すると見込まれている。
- Asean+3 bloc to grow 4% in 2026 and 2027 despite external challenges: Amro 2026年3月に採択された中国の第15次五カ年計画は、技術的自立、先進製造業、デジタル経済、国内消費の促進を優先している。
- EU-Mercosur trade deal set for provisional application from May 1 - World Footwear 欧州委員会は、メルコスール条約の法的保護者であるパラグアイに「口上書」を送付し、暫定適用に必要な最終的な手続きを完了した。この協定は、ほとんどの関税を撤廃することで世界最大級の自由貿易圏を確立すると期待されており、2040年までにEUの輸出を最大500億ユーロ増加させ、年間約40億ユーロの節約を生み出す可能性がある。
- 18th BRICS summit - Wikipedia インドは2026年のBRICS議長国を務め、第18回BRICSサミットを主催する予定である。
- Global Trade Update (March 2026): Reforming trade rules to drive development 2026年3月の世界貿易アップデートでは、貿易ルールが予測不可能になっていると指摘されており、各国は産業政策、国家安全保障、地政学に関連する関税、投資審査、技術制限などの差別的な貿易措置をますます使用している。
- WTO Sees 2026 Trade Slowdown, Warns Middle East Conflict Could Cut Deeper 世界貿易機関(WTO)は、2026年の商品貿易量成長率が1.9%に減速すると予測している。2026年の商品輸入成長率は、アジアが3.3%、アフリカが3.2%、南米が2.5%と予測されている。輸出側では、アジアと南米がともに3.5%の成長が見込まれている。2026年2月末時点で、世界の貿易の72%が最恵国待遇(MFN)原則に基づいて行われていた。
- EU policy on the World Trade Organization in the wake of the March Ministerial - Bruegel 2026年3月26日から29日にカメルーンのヤウンデで開催されたWTO第14回閣僚会議は、WTO改革、電子商取引への関税賦課モラトリアムの延長、開発のための投資円滑化(IFD)協定のWTOへの組み込みという3つの主要議題で合意に達しなかった。しかし、66のWTO加盟国は電子商取引協定を国内で批准し、暫定的に実施することに合意した。会議の失敗は主に、電子商取引関税モラトリアムの期間を巡る米国とブラジルの意見の相違、およびIFD協定のWTOへの組み込みに対するインドの反対に起因する。
- WTO Forecast: Global Trade Growth to Slow to 1.9% in 2026 Amid Conflict Risks 世界貿易機関(WTO)の報告によると、2026年の世界貿易の拡大は、2025年の力強い成長の後、鈍化すると予測されている。商品とサービス貿易の合計成長率は、2025年の4.7%から2026年には2.7%に減速すると予想されている。
- IISD Trade and Sustainability Review, March 2026 第14回世界貿易機関(WTO)閣僚会議(MC14)は、2026年3月にヤウンデで開催され、WTO改革、現代の産業政策、電子商取引ガバナンス、投資円滑化、漁業補助金、農業交渉、貿易関連の気候変動対策など、世界の貿易を形成する主要な問題について議論された。
- Hormuz disruption deepens global economic strain across trade, prices and finance: UNCTAD — SMI DIGITAL - Ship Management International 2026年3月、ホルムズ海峡の船舶通過が2月の1日あたり約130隻から6隻へと約95%減少した。この混乱は世界の貿易に大きな打撃を与え、2026年の世界の商品貿易成長率は2025年の約4.7%から1.5%~2.5%に減速すると予測されている。
- UN: UNCTAD flags ten defining trends as global trade faces crossroads 国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2026年の世界貿易が、世界経済の成長鈍化、地政学的な分断の深化、デジタル化とグリーン化への急速な移行、そしてますます制限的な国内規制といった複合的な圧力に直面していると指摘した。南南貿易は世界の貿易の主要な原動力として台頭しており、1995年から2025年にかけて南南の商品輸出は推定0.5兆ドルから6.8兆ドルに急増した。
- Turning Tariffs into Opportunity:How the Global South Can Reshape U.S. Textile Supply Chains 米国は2025年4月にほぼ全ての輸入品に10%の基準関税を導入し、数日後には一部のカテゴリーで関税が50%を超える報復措置が取られた。これにより、米国の実効関税率は約22.5%に上昇し、1909年以来の最高水準となった。
- Hormuz disruption triggers global trade shock, fuels economic uncertainty: UNCTAD ホルムズ海峡の海上交通がほぼ完全に途絶し、2月の1日あたり129隻から3月にはわずか6隻へと95%も減少した。この混乱は世界の貿易に大きな打撃を与え、2026年の世界経済成長率は約2.6%と予測されている。
- China's Five-Year Plan: Insights for global trade and investment | World Economic Forum 中国の第15次五カ年計画は、グローバルサウスとの経済関係を深化させ、特に「一帯一路」構想を通じて市場アクセスを拡大し、サプライチェーンの連携を強化し、新たな成長回廊を構築することを強調している。
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