2026年3月、日本のエネルギー政策は転換点へ:安全保障強化と原子力再稼働の現実
中東情勢緊迫化と日本のエネルギー安全保障:経済的影響と政策対応
2026年3月2日に発表された第一生命経済研究所の試算によると、原油価格が130ドルまで上昇する最悪シナリオでは、日本の実質GDPが最大1.0%程度押し下げられ、実質賃金のマイナス幅が再拡大する可能性があります。これに対し、政府は中東情勢の悪化に伴い原油や液化天然ガス(LNG)の安定確保が困難になる事態を想定し、脱炭素化に向けた非効率な石炭火力発電所の稼働率制限(原則50%以下)を2026年4月から1年間限定で解除する方針を正式に決定しました。これにより、安定的に調達できる石炭を活用し、LNGの消費を抑える狙いです。
日本のエネルギー自給率は2023年度速報値で15.2%にとどまり、原油の90%以上を中東に依存しているため、中東情勢の緊迫化は日本のエネルギー安全保障にとって重大なリスクとなります。アジアのLNGスポット価格(JKM)は、2026年2月27日時点で11.06ドル/mmBtuと報じられています。家計や企業への負担増も懸念されており、電気・ガス料金支援は2026年1月・2月使用分が低圧で4.5円/kWhだったものが、3月使用分では1.5円/kWhに縮小されました。また、2026年度の再生可能エネルギー賦課金は4.18円/kWhに設定されています。
高市政権下では、日本の政策優先順位が従来の「脱炭素・GX」から「エネルギー・資源安全保障」へと大きく転換され、原子力発電の推進や太陽光発電の規制強化が打ち出されています。高市首相は2月20日の施政方針演説でもエネルギー安全保障を重視する姿勢を示しました。
原子力発電再稼働の現状と長期展望:柏崎刈羽の進展と「原子力の崖」
東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機は2026年2月に発電および送電を開始しました。これは東日本大震災後、東京電力の原発としては初の稼働となります。一方で、柏崎刈羽7号機、日本原子力発電東海第二、北海道電力泊3号機などは設置変更許可を得ているものの、現時点では再稼働に至っていません。
政府は2040年度の全電源構成における原子力発電の比率20%を目標に掲げていますが、現状稼働中の設備だけではこの目標達成は困難であるとされています。特に、2040年代には1970年代から1980年代に集中建設された原子炉が運転期間満了により一斉廃炉を迎える「原子力の崖」と呼ばれる問題が迫っています。こうした状況に対し、2023年5月に可決・成立したGX脱炭素電源法では、原子力規制委員会による審査などで運転を停止した期間を計算から除外し、その分を追加的に運転期間を延長できる新方針が盛り込まれており、老朽化する原子炉の活用に向けた実質的な可能性が開かれています。
[ Reference ]
- 国内外の主要なエネルギー政策動向(2026年3月2日版)|Grid Shift - note
高市政権下において、日本の政策優先順位が従来の「脱炭素・GX」から「エネルギー・資源安全保障」へと大きく転換され、原子力発電の推進や太陽光発電の規制強化が打ち出されている。
- グローバル・エネルギー・ウォッチ Vol.59 電力危機の時代(下)資源を持たない国・日本の選択 2040年の電力危機にどう備えるか - エネフロ
第一生命経済研究所の2026年3月2日時点の試算によると、原油価格が130ドルまで上昇する最悪シナリオでは、日本の実質GDPが最大1.0%程度押し下げられ、実質賃金のマイナス幅が再拡大する可能性がある。また、東京電力柏崎刈羽6号機は2026年1月21日に約14年ぶりに再稼働し、現在営業運転に向けた準備中である。2040年代には、1970~80年代に集中建設された原子炉が運転期間満了により一斉廃炉を迎える「原子力の崖」が迫っている。第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)は2040年度に全電源構成における原子力発電の比率20%を目標に掲げているが、現状稼働中の設備だけでは達成困難である。
- 夏の電力需給見通し、柏崎刈羽原発再稼働で最も厳しい東電管内でも余力確保…中東情勢悪化で石炭火力活用 - 読売新聞オンライン
中東情勢の悪化に伴い、原油や液化天然ガス(LNG)の安定確保が困難になる事態を想定し、経済産業省は脱炭素化に向けた非効率な石炭火力の稼働率制限(原則50%以下)を2026年4月から1年間限定で解除する方針を正式に決定した。これにより、安定的に調達できる石炭を活用し、LNGの消費を抑える。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働により、2026年度夏季の東京電力管内でも安定供給に必要な予備率3%を確保できる見通しとなった。
- The government plans to increase the operating rate of coal-fired power plants in preparation for... - YouTube
政府は、緊迫したイラン情勢の長期化によりLNGなどの調達が難しくなる事態に備え、石炭火力発電所の稼働率を引き上げる方針である。脱炭素に向け、発電効率の低い非効率石炭火力の稼働率を原則5割以下に抑えてきたが、4月から1年間限定で稼働制限を解除する。
- 原子力政策に関する 最近の動向について - 経済産業省
東京電力柏崎刈羽原子力発電所6号機は2026年2月に発電および送電を開始した。柏崎刈羽7号機、日本原子力発電東海第二、北海道電力泊3号機は設置変更許可を得ているが、再稼働には至っていない。2026年3月31日時点で、再稼働済みの原子炉は15基である。
- 全国の原発の再稼働状況と、これから「くるもの」/2026年3月中旬
2026年3月10日現在、日本国内では3事業者・6サイト・9基の商用発電用原子炉が営業運転中である。
- 【2026年度対応】改正GX推進法とは?GX-ETSの対象企業・義務・実務対応を徹底解説!
改正GX推進法は2026年4月1日から本格稼働し、排出量取引制度(GX-ETS)が導入される。前年度までの直近3年度平均でCO2直接排出量が10万t-CO2以上の事業者は、排出量の算定、届出、移行計画の提出、排出枠の保有といった具体的な義務が課される。2026年度は制度開始初年度のため、対象事業者は2026年4月1日から排出量の算定を開始し、9月30日までに制度対象である旨の届出と移行計画の提出を行う。
- GX(グリーン・トランスフォーメーション) - 経済産業省
日本政府は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)を推進しており、10年間で150兆円超の官民GX投資を実現すべく、GX経済移行債を活用した20兆円規模の投資促進策や、段階的なカーボンプライシング(排出量取引・化石燃料賦課金)の導入を進めている。
- 燃料調達をめぐる動向と 電力・ガスの安定供給について - 経済産業省
2026年2月27日時点のJKM(アジアのLNGスポット価格)は11.06ドル/mmBtuであったが、3月25日時点では18.02ドル/mmBtuに上昇した。日本の電源構成(2024年度速報値)は、石炭約29%、天然ガス約32%、石油等約7%、原子力約9%、再エネ約23%である。
- 蓄電池は元が取れない? 2026年3月の世界情勢と日本の電力環境から考える「そうも言っていられなくなった」理由
日本のエネルギー自給率は2023年度速報値で15.2%にとどまり、原油の90%以上を中東に依存している。電気・ガス料金支援は、2026年1月・2月使用分が低圧で4.5円/kWh、3月使用分が1.5円/kWhに縮小された。2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhとなり、2026年5月検針分から適用される。
- 2026年度の電力需給見通しについて
2026年度の電力需給見通し(2026年3月27日発表)では、夏季・冬季ともに全エリアで安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しである。東京エリアでは、柏崎刈羽原発6号機が3月27日時点では営業運転に至っていないものの、本見通しでは運転しているという計画のもと、予備率に計上されている。
- 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します - 経済産業省
経済産業省は2026年3月19日、再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定した。
- 岸田政権のエネルギー政策の通信簿 | 橘川武郎 - 世界経済評論
2022年12月のGX実行会議において、岸田首相は原子力発電所の運転期間に関して、原則40年、延長は1回に限り最長20年という現行の枠組みを維持しつつも、原子力規制委員会による審査などで運転を停止した期間を計算から除外し、その分を追加的に延長できるようにする新方針を打ち出した。この新方針を盛り込んだGX脱炭素電源法案は2023年5月に可決・成立した。
- 高市首相、脱炭素では安定的で安価なエネルギーは実現しません | キヤノングローバル戦略研究所
2026年3月2日のアゴラ記事によると、高市首相は2月20日の施政方針演説でエネルギー政策に言及し、脱炭素やGXといった文言よりもエネルギー安全保障を重視する姿勢を示した。
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