激動する世界貿易秩序:グローバルサウスの新たな貿易政策と地域経済の動向

ホルムズ海峡危機がグローバルサウスの貿易に与える即時的影響

2026年2月末にホルムズ海峡で危機が激化し、世界の貿易に深刻な影響を与えています。国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によると、3月にはホルムズ海峡を通過する船舶の数が前月の1日あたり約129隻からわずか6隻へと、実に95%も減少しました。この劇的な変化は、エネルギー価格の高騰を招き、特に途上国に対して財政的圧力を増大させています。この混乱を受け、2026年の世界経済成長予測は2025年の2.9%から2.6%へと下方修正されました。サプライチェーンの不確実性が高まる中、投資家心理にも負の影響が及んでいます。

ASEAN経済共同体の深化と新たな貿易戦略

ASEANは、地域経済共同体の一層の発展を目指し、2026年に向けた新たな経済戦略を策定しました。この戦略は、2026年1月に開催された高級経済実務者会合(SEOM)で策定されたものです。主要な戦略として、貿易・投資のシームレスな域内統合深化、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)を通じたデジタル市場の発展、中小零細企業(MSME)の能力強化、グリーン経済への移行加速、クリエイティブ経済の推進の5点が挙げられています。特に、食品、エネルギー、重要鉱物、半導体といった重要分野におけるサプライチェーンの統合に重点が置かれています。また、ASEANカナダFTAおよびASEANインド物品貿易協定(AITIGA)の改定交渉を年内に完了させることを目指し、取り組みが進められています。

グローバルサウスにおける貿易政策と多角的貿易体制の課題

グローバルサウス諸国は、多角的貿易体制において様々な課題に直面しています。インドは、中国が主導する「開発のための投資円滑化協定(IFDA)」を世界貿易機関(WTO)の枠組みに組み込むことに反対の姿勢を示しています。一方で、BRICS諸国は米ドルへの依存度を低減する取り組みを加速させており、ブラジルが米国債を売却し金準備を増やすとともに、中国との間で大豆取引における現地通貨決済を開始するなどの動きが見られます。BRICS全体としては、域内決済網「Brics Pay」の整備を急ぎ、ドルを介さない金融・貿易インフラの構築を本格化させています。2012年に約10%だったBRICS域内貿易は、2023年には18%に達しており、これらの動きは国際貿易秩序における新たな潮流を示しています。

[ Reference ]

  • Hormuz disruption triggers global trade shock, fuels economic uncertainty: UNCTAD
    2026年2月末にホルムズ海峡で危機が激化し、3月には船舶の通過が前月の1日あたり約129隻からわずか6隻へと95%減少した。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、この混乱が世界の貿易に大きな打撃を与え、エネルギー価格の高騰、途上国への財政的圧力の増大を引き起こしていると報告した。これにより、2026年の世界経済成長予測は下方修正された(2025年の2.9%から2.6%へ)。
  • ASEAN、2026年の経済戦略を策定、3月の経済大臣会合に提出(ASEAN、タイ) | ビジネス短信
    2026年1月に開催されたASEAN高級経済実務者会合(SEOM)で、ASEANを世界第4位の経済圏とするための5つの戦略が策定され、2026年3月のASEAN経済大臣会合で提案される予定である。これらの戦略には、食品、エネルギー、重要鉱物、半導体などのサプライチェーン統合に焦点を当てた貿易・投資のシームレスな域内統合の深化、ASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)を通じたデジタル市場の発展、中小零細企業(MSME)の能力強化、グリーン経済への移行加速、クリエイティブ経済の推進が含まれる。また、ASEANカナダFTAおよびASEANインド物品貿易協定(AITIGA)改定の交渉を年内に完了させることを目指している。
  • EAC sets 2026 target to remove non-tariff barriers - BANKABLE
    東アフリカ共同体(EAC)の首脳は、2026年3月7日に開催された第25回通常サミットで、残存する非関税障壁を2026年6月30日までに撤廃する期限を設定した。2025年第3四半期におけるEAC域内貿易は48億ドルに達し、前年同期比15%増加したが、これはEACの総貿易額の約15%に過ぎず、域内統合の遅れを示している。ケニアとウガンダ間の乳製品貿易における制限など、非関税障壁は依然として貿易を阻害し、企業が域外市場に目を向ける原因となっている。
  • MC14: Global South opposes US push for permanent e-com moratorium
    2026年3月26日から29日にカメルーンのヤウンデで開催された世界貿易機関(WTO)第14回閣僚会議(MC14)では、多角的貿易体制の将来に関する深い亀裂が露呈した。グローバルサウス諸国は、米国が推進する電子商取引に関する関税モラトリアムの恒久化に反対し、これは途上国の政策余地を損なうと主張した。
  • India Stands Alone in Opposing China-Backed WTO Investment Deal
    インドは、中国主導の「開発のための投資円滑化協定(IFDA)」をWTOの枠組みに組み込むことに反対した。
  • Global Call to Mobilise Against the WTO and Free Trade Agreements - La Via Campesina
    ラ・ビア・カンペシーナなどの市民社会団体は、WTOと自由貿易協定に反対し、食料主権に基づく代替貿易枠組みを求めて動員を行った。
  • BRICSが脱ドル化を加速=米国債圧縮、域内決済網整備へ - ブラジル日報
    BRICS諸国は、米ドルへの依存度を低減する取り組みを加速しており、ブラジルは米国債を売却し金準備を増やすとともに、中国との間で大豆取引における現地通貨決済を開始した。BRICS全体では、域内決済網「Brics Pay」の整備を急ぎ、ドルを介さない金融・貿易インフラの構築を本格化させている。2012年に約10%だったBRICS域内貿易は、2023年には18%に達した。
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