グローバルサウス、中東情勢の激変に直面:エネルギー安全保障とAI主権を通じた自律性強化
中東情勢の緊迫化:ホルムズ海峡封鎖とグローバルサウスへの経済的打撃
2026年2月28日頃、米国とイスラエルによるイランへの攻撃が開始され、これに対するイランの報復攻撃により、国際的な物流の要衝であるホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥りました。この事態は、中東からの石油調達を困難にし、原油価格の急騰を引き起こしています。また、カタールの液化天然ガス(LNG)設備も損傷し、エネルギー供給の回復には時間がかかると見られています。
東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、イランがドローンや対艦ミサイルを用いてホルムズ海峡を「戦争地域化」し、実質的な封鎖状態を作り出していると指摘しています。この紛争による原油供給の混乱は、過去のオイルショックを超える規模になる可能性があり、特に戦略備蓄が少ない東南アジアなどのグローバルサウス諸国において、深刻なエネルギー不足や停電が発生する恐れがあると警告されました。
実際に、中東へのエネルギー依存度が高く、原油備蓄が少ないアジア新興国では、深刻な経済的打撃が顕在化しています。フィリピン、インドネシア、スリランカなどでは、非常事態宣言の発令、在宅勤務の導入、石油配給制といった緊急措置が既に導入されており、エネルギーや肥料・農業資材のコスト上昇が経済活動の停滞を招いています。
多極化する世界におけるグローバルサウスの自律性追求:外交とデジタル主権
中東情勢の緊迫化がグローバルサウス諸国の脆弱性を浮き彫りにする一方で、これらの国々は国際社会の多極化を背景に、多角的な外交と政治的自律性を追求する動きを強めています。インドは2026年1月1日にBRICS議長国に就任し、本年中に第18回BRICS首脳会議のホスト国を務める予定です。インドの議長国としてのテーマは「回復力、革新、協力、持続可能性のための構築」であり、気候変動対策、グリーンファイナンス、エネルギー移行、持続可能な開発、政策協調の強化などを通じた多国間連携の深化を目指しています。BRICSは、地球規模および地域的な現代的問題や、世界の政治経済ガバナンスに関する協議と協力のための有用なプラットフォームとして機能しています。
デジタル分野における自律性追求の動きも見られます。2026年3月1日にインドで開催された「AI影響力サミット」では、「全民AI」戦略を推進する「ニューデリーAI影響宣言」に91の国と国際機関が署名しました。これは、グローバルサウスが「AI主権」を確立しようとする動きの一環と分析されています。AI主権とは、外国の技術基盤への受動的な依存や孤立主義的な撤退ではなく、自国の発展上の優先事項、倫理的基準、制度的現実に基づいてAI戦略を構築するアプローチであり、「認知主権」と「エネルギー回復力」をその基盤としています。
主要国もまた、グローバルサウスとの関係強化を重視しています。日本の外務省は2026年2月26日に「ODA×OSAクロストーク:グローバル・サウス連携のための戦略的ツール」と題した業務説明会を開催し、多極化が進む国際社会において、グローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国との関係強化が一層重要性を増していることを強調しました。
[ Reference ]
- 中東情勢悪化が水供給や食糧確保にも影響(世界、中東、アフリカ) - ジェトロ
米国とイスラエルは2026年2月28日頃にイランへの攻撃を開始し、これに対しイランは報復攻撃を行い、国際的な物流の要衝であるホルムズ海峡が事実上封鎖状態となった。この事態により、エネルギーや肥料・農業資材のコスト上昇を招いている。
- トランプ米大統領が演説、対イラン作戦継続を表明、2~3週間での合意形成目指す - ジェトロ
トランプ米大統領は2026年4月1日の演説で、2026年3月に開始された「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦」を含む対イラン軍事作戦を継続し、今後2~3週間でイランを徹底的に攻撃する方針を示した。
- 先月のマーケットの振り返り(2026年3月) | 三井住友DSアセットマネジメント
中東での戦闘が長引き、ホルムズ海峡経由の石油調達が困難になったことを背景に、原油価格が上昇し、カタールではLNG設備が損傷するなど、中東からのエネルギー供給回復には時間がかかると見られている。
- イスラエル・米の対イラン攻撃から1カ月 鈴木一人教授、ホルムズ海峡封鎖と世界経済への波及に警鐘 | 黃信維(コウ・シンイ)
東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は、イランがドローンや対艦ミサイルを用いてホルムズ海峡を「戦争地域化」し、実質的な封鎖状態を作り出していると指摘。この紛争による原油供給の混乱が過去のオイルショックを超える規模になる可能性があり、特に戦略備蓄が少ない東南アジアなどのグローバルサウス諸国で深刻なエネルギー不足や停電が発生する恐れがあると警告した。
- イラン情勢の悪化がアジア新興国に与える「原油以外」の悪影響 ~経済活動の停滞による中東向け輸出の減少に加え、移民送金減少など副次的影響にも要注意~ | 西濵 徹 | 第一生命経済研究所
ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、中東産原油価格が高騰しており、中東への依存度が高く原油備蓄が少ないアジア新興国(フィリピン、インドネシア、スリランカなど)では、非常事態宣言や在宅勤務導入、石油配給制といった緊急措置が導入されている。
- 中東地域のパートナーへの支持に関するG7外相声明 - Ministry of Foreign Affairs of Japan
G7外相は2026年3月22日、イラン・イスラム共和国およびその代理勢力の不当な攻撃に直面する地域のパートナーへの支持を表明し、イランによる全ての攻撃の即時かつ無条件の停止を求め、ホルムズ海峡を含む海上航路の防護と航行の安全の重要性を再確認した。
- G7外相会合(3/26~27):中東情勢に関する議論令和8年(2026年)
2026年3月26日から27日にかけて開催されたG7外相会合では、イランおよび地域の情勢について議論され、民間人および民間インフラに対する攻撃の即時停止が求められ、ホルムズ海峡の安全かつ通航料なく通過する航行の自由の恒久的な回復の必要性が改めて表明された。
- G7、エネルギー市場安定化に向けあらゆる措置を講じる用意=共同声明 - ニューズウィーク
G7財務相・中銀総裁らは2026年3月30日、エネルギー市場の安定を確保し、最近の変動による広範な経済への波及効果を抑えるため、「必要なあらゆる措置」を講じる用意があるとの共同声明を発表した。
- G7、不当な輸出制限課さないよう要求 - ライブドアニュース - Livedoor
先進7カ国(G7)財務相とエネルギー相は2026年3月30日の声明で、エネルギー市場の健全性を維持するため、石油などの資源や関連製品への不当な輸出制限を課さないよう全ての国に要求した。
- 18th BRICS summit - Wikipedia
インドは2026年1月1日にBRICS議長国に就任し、2026年に開催される第18回BRICS首脳会議のホスト国を務める。インドの議長国としてのテーマは「回復力、革新、協力、持続可能性のための構築」である。
- brics 2026
BRICSは、地球規模および地域的な重要性を持つ現代的な問題や、世界の政治経済ガバナンスに関する協議と協力のための有用なプラットフォームとして機能している。インドの2026年BRICS議長国としての主要な柱には、気候変動対策、グリーンファイナンス、エネルギー移行、持続可能な開発に向けた集団的努力の加速、政策協調の強化を通じたBRICS加盟国間の多国間連携の深化などが含まれる。
- 本周金砖国家新闻摘要 - TV BRICS
2026年3月1日のBRICSニュース摘要によると、インドで開催された「AI影響力サミット」では、「全民AI」戦略を推進する「ニューデリーAI影響宣言」に91の国と国際機関が署名した。
- トゥフ・ヌグラハ「AI主権とグローバル・サウスの第三の道」(MODERN DIPLOMACY 2026年3月21日)
グローバルサウスには、外国の技術基盤への受動的な依存でも、孤立主義的な撤退の幻想でもない「デジタル分野における第三の道」が必要であり、これは自国の発展上の優先事項、倫理的基準、制度的現実に基づいてAIと制度戦略を構築する「AI主権」のアプローチであると提唱されている。このAI主権は「認知主権」と「エネルギー回復力」の2つの基盤を持つ。
- 2026年 業務説明会:ODA×OSAクロストーク グローバル・サウス連携のための戦略的ツール|外務省
日本の外務省は2026年2月26日に「ODA×OSAクロストーク:グローバル・サウス連携のための戦略的ツール」と題した業務説明会を開催し、多極化が進む国際社会において「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国との関係強化が一層重要性を増していることを強調した。
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