緊迫する中東情勢と国連安保理の機能不全:グローバル秩序の課題とインド太平洋地域の連携強化
中東情勢の緊迫化:イラン最高指導者の死と報復の連鎖
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対し、核の脅威排除、弾道ミサイル兵器破壊、テロネットワーク弱体化、海軍力麻痺を目的とした軍事作戦「エピック・フューリー作戦」を開始しました。
この作戦を受け、3月1日頃にはイラン最高指導者アリ・ハメネイ師の死亡が報じられ、イランの指導体制の先行きに不透明感が増しています。ハメネイ師の死後、イランからは数百発のミサイルと数千機のドローンが中東全域に発射され、イランと周辺諸国での攻撃が激化しました。この報復攻撃により、40人以上のイラン当局者が死亡したと伝えられています。また、世界の旅行と貿易は即座に影響を受け、中東発着のフライトはほぼ完全に停止し、ドバイ国際空港もドローン攻撃で損傷を受けました。
3月2日には、ヒズボラがイスラエルにミサイルとドローンを発射し、これに対してイスラエルはレバノン南部への空爆を激化させました。英国、フランス、ドイツの首脳は共同声明を発表し、イランの地域同盟国への報復攻撃を阻止するため、米国と協力したい意向を示しています。
この衝突は、戦略的に重要なホルムズ海峡の航行にも壊滅的な影響を与えています。2026年3月1日以降、ホルムズ海峡を通過する船舶の自動識別システム(AIS)放送トランジットが、その前の期間と比較して96%減少したと報告されています。イラン当局は、中国本土、バングラデシュ、トルコ、インドに関連する一部の船舶の通過を許可したと述べています。
一方で、中東地域の一部湾岸諸国はイランによる攻撃を非難しつつも、イランへの攻撃のために米国が自国領土や空域を使用することに対しては、テヘランからの報復の標的となることを警戒し、慎重な姿勢を示しています。
国連安全保障理事会の機能不全と加盟国間の亀裂
中東情勢の緊迫化に対し、国連安全保障理事会(安保理)は対応の遅れと加盟国間の意見対立に直面しています。2026年3月は米国が安保理の議長国を務めていますが、3月の作業計画は、イランに関する1737制裁委員会へのブリーフィングを含めることに中国とロシアが反対したため、理事国間で合意に至りませんでした。この意見の相違は、イラン核合意(JCPOA)によって停止されていた国連制裁の再発動メカニズムを巡る紛争に起因するとされています。
米国は議長国として、3月2日午後に「紛争における子供、テクノロジー、教育」に関するブリーフィングを開催し、メラニア・トランプ大統領夫人が議長を務めました。
また、ホルムズ海峡の船舶を保護するための「防衛的」武力行使を承認する決議案の採決が延期されています。この決議案はバーレーンが提出したもので、当初3月3日とされていた採決が延期されました。決議案の最新版は、国連憲章第7章の明示的な援用を避け、いかなる介入も防衛的性質であることを強調する内容です。しかし、拒否権を持つ常任理事国の中国は、「事態を悪化させる」として、いかなる武力行使の容認にも反対する姿勢を示しており、安保理が国際危機に効果的に対応できない現状を浮き彫りにしています。
地域同盟の変遷とインド太平洋地域の動向
中東情勢の緊迫化が地域同盟に亀裂を生じさせる一方で、インド太平洋地域では多国間協力と地域同盟の強化が進展しています。
2026年3月には、米国主導の多国籍対潜水艦戦演習「シー・ドラゴン2026」が完了しました。この演習にはオーストラリア、インド、日本、ニュージーランド、米国の海軍が参加し、インド太平洋地域における海洋安全保障上の課題に対応するための対潜水艦戦術の訓練と共同作戦能力の強化を目的としました。
オーストラリア国防軍は2026年も地域プレゼンス展開プログラムを継続しており、3月にはオーストラリア海軍の艦艇HMAS WarramungaがインドのVisakhapatnamで開催された国際観艦式と多国間訓練「ミラノ演習」に参加しました。また、HMAS Toowoombaは南シナ海での地域プレゼンス展開を継続し、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁を支援する「アルゴス作戦」を完了した後、海上自衛隊との「日豪トライデント演習」を支援しました。
2026年1月には、日本防衛大臣が「檀香山防衛論壇」で、不確実な時代においてインド太平洋地域のパートナーが防衛能力と産業を強化することで「決意を再構築」していると述べました。米国インド太平洋司令部司令官も、このような同盟とパートナーシップが「戦略的重心」であると強調し、同盟国やパートナーとの協力が全体的な能力を倍増させ、侵略行為に対する抑止力となると指摘しています。
[ Reference ]
- Global National: March 1, 2026 | Casualties mount as Iran strikes intensify - YouTube
2026年3月2日、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師の死が報じられ、イランと周辺の中東諸国で攻撃が激化している。米国とイスラエルによる空爆後、イランの指導体制の先行きは不透明であり、40人以上のイラン当局者が死亡したと報じられている。また、英国、フランス、ドイツの首脳は共同声明を発表し、イランの地域同盟国への報復攻撃を阻止するため米国と協力したい意向を示した。
- 2026 Iran war | Explained, United States, Israel, Strait of Hormuz, Map, & Conflict | Britannica
2026年2月28日に米国とイスラエルがイランに対して開始した軍事作戦「エピック・フューリー作戦」により、イラン最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害され、イランから数百発の報復ミサイルと数千機のドローンが中東全域に発射された。3月2日にはヒズボラがイスラエルにミサイルとドローンを発射し、イスラエルによるレバノン南部への空爆が激化した。この戦争は世界の旅行と貿易に即座に影響を与え、中東発着のフライトはほぼ完全に停止し、ドバイ国際空港もドローン攻撃で損傷した。
- Overview, March 2026 Monthly Forecast - Security Council Report
2026年3月、米国が国連安全保障理事会の議長国を務める。米国は「紛争における子供、テクノロジー、教育」と「エネルギー、重要鉱物、安全保障」に関する2つの主要イベントを予定しており、最初の会議は3月2日午後にメラニア・トランプ大統領夫人が議長を務めた。また、イランに関する1737制裁委員会と大量破壊兵器の非国家主体への拡散防止を支援する1540委員会に関するブリーフィングも計画されている。
- Security Council Plan of Work for March 2026* : What's In Blue
2026年3月の国連安全保障理事会の作業計画について、中国とロシアがイランに関する1737制裁委員会のブリーフィングを含めることに反対したため、理事国間で合意に至らなかった。この意見の相違は、イラン核合意(JCPOA)によって停止されていた国連制裁を再発動する「スナップバック」メカニズムを巡る紛争に起因する。米国は議長国として、3月2日午後に「紛争における子供、テクノロジー、教育」に関するブリーフィングを開催した。
- UN Security Council delays vote on authorizing force to protect Hormuz | ABS-CBN News
国連安全保障理事会は、イランによる攻撃からホルムズ海峡の船舶を保護するための「防衛的」武力行使を承認する決議案の採決を延期した。この決議案はバーレーンが提出したもので、当初3月3日に採決される予定だったが、国連が聖金曜日を祝日としているため延期された。決議案の最新版は、国連憲章第7章の明示的な援用を避け、いかなる介入も防衛的性質であることを強調している。
- Geopolitical Risk Brief: March 2026 | S&P Global
S&P Global Market Intelligenceのデータによると、2026年3月1日から3月14日の間に、ホルムズ海峡を通過するあらゆる種類の船舶の自動識別システム(AIS)放送トランジットが、その前の10日間(2月14日~28日)と比較して96%減少した。イラン当局は、中国本土、バングラデシュ、トルコ、インドに関連する一部の船舶の通過を許可したと述べた。イランの新しい最高指導者モジタバ・ハメネイは3月12日、イランは地域の米軍基地への攻撃を維持し、ホルムズ海峡を封鎖すると述べた。
- Trump Administration Foreign Policy Tracker: April - FDD
2026年3月2日、ヒズボラは15ヶ月ぶりにイスラエルとの戦争を再燃させ、ミサイルとドローンを発射した。イスラエル国防軍(IDF)はヒズボラの武装解除を目標にレバノンでの作戦を再開したが、イランでの戦争がIDFの計画と資源を占有しているため、レバノン戦線は中程度の強度とテンポに落ち着いた。また、2026年の米国国家防衛戦略は、韓国が北朝鮮の抑止に主要な責任を負う能力があると位置づけており、THAADコンポーネントの再配備と3月14日の北朝鮮による3回目の弾道ミサイル発射実験がこれと時期を同じくした。
- Peace Through Strength: President Trump Launches Operation Epic Fury to Crush Iranian Regime, End Nuclear Threat - The White House
2026年3月1日、ドナルド・J・トランプ大統領は、イラン政権の核の脅威を排除し、弾道ミサイル兵器を破壊し、テロネットワークを弱体化させ、海軍力を麻痺させるための「エピック・フューリー作戦」を承認した。この作戦は地域同盟国との連携で実行され、サウジアラビアはイランの侵略を非難し、影響を受けた湾岸諸国との連帯を表明した。
- Australia, India, Japan, New Zealand, U.S. complete exercise Sea Dragon 2026
2026年3月、米国主導の多国籍対潜水艦戦演習「シー・ドラゴン2026」が完了した。この演習にはオーストラリア、インド、日本、ニュージーランド、米国の海軍が参加し、インド太平洋地域における海洋安全保障上の課題に対応するための対潜水艦戦術の訓練と共同作戦能力の強化を目的とした。日本の海上自衛隊のVP-3が「ドラゴンベルト」を獲得した。
- Regional presence deployments continue in 2026 - Defence
オーストラリア国防軍は2026年も地域プレゼンス展開プログラムを継続しており、3月にはHMAS WarramungaがインドのVisakhapatnamで開催された国際観艦式と多国間訓練「ミラノ演習」に参加した。HMAS Toowoombaは南シナ海での地域プレゼンス展開を継続し、国連安全保障理事会の北朝鮮制裁を支援する「アルゴス作戦」を完了した後、海上自衛隊との「日豪トライデント演習」を支援した。
- Alliance Rift And De-Dollarization As Derivatives Of The U.S.-Israel Vs Iran War – Analysis
中東紛争の激化は、地域同盟に亀裂を生じさせている。イランによる自国領土への攻撃を非難しつつも、いくつかの湾岸諸国は、イランへの攻撃のために米国が自国領土や空域を使用することを拒否した。これは、テヘランからの報復の標的になることを警戒しているためである。
- 印太聯盟是動盪時期的「戰略重心」 - Indo-Pacific Defense FORUM
2026年1月、日本防衛大臣小泉進次郎は「檀香山防衛論壇」で、不確実な時代において、インド太平洋地域のパートナーは防衛能力と産業を強化することで「決意を再構築」していると述べた。米国インド太平洋司令部司令官サミュエル・J・パパロ上将は、このような同盟とパートナーシップが「我々の戦略的重心」であると強調し、同盟国やパートナーと協力することで全体的な能力が倍増し、侵略行為に対する抑止力が高まると述べた。
- 2026年3月19日外交部发言人林剑主持例行记者会_中华人民共和国驻美利堅合衆国大使館
2026年3月19日、中国外交部の林剣報道官は、イラン国家指導者の殺害と民間人標的への攻撃は容認できないと述べ、国際関係における武力行使に一貫して反対する姿勢を表明した。中東地域の緊張激化に対し、中国は関係当事者に対し、軍事行動を直ちに停止し、地域情勢が制御不能な状態に陥るのを防ぐよう強く求めた。
- 国連安保理 ホルムズ海峡での武力行使を含む「防衛」決議案の採決延期 - KAB 熊本朝日放送
国連安全保障理事会は、イランによる航行妨害に対し武力行使を容認する決議案の採決を延期した。この決議案はバーレーンが提示したもので、ホルムズ海峡周辺での航行の安全を確保するため、各国に武力行使を含む「必要なあらゆる防衛手段」を用いることを認める内容だった。しかし、拒否権を持つ常任理事国の中国は「事態を悪化させる」として、いかなる武力行使の容認にも反対する姿勢を示している。
Vantage Politics