グローバル・ミニマム課税 第2の柱:日本における制度導入とOECD「Side-by-Sideパッケージ」の企業への影響
グローバル・ミニマム課税、日本でUTPR・QDMTTが4月1日適用開始へ
多国籍企業グループの国際的な税負担を大きく左右するグローバル・ミニマム課税(第2の柱)について、日本において2026年4月1日以降に開始する対象会計年度から、軽課税所得ルール(UTPR)および国内ミニマム課税(QDMTT)が適用開始されます。これは令和7年度税制改正により法制化されたものです。UTPRは「国際最低課税残余額に対する法人税」として、またQDMTTは「国内最低課税額に対する法人税」として導入されます。
グローバル・ミニマム課税は、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で合意された国際課税ルールの一部であり、全世界での年間総収入金額が7億5,000万ユーロ(約1,000億円)以上の多国籍企業グループを対象に、各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保することを目的としています。日本においては、既に所得合算ルール(IIR)が2024年4月1日以降に開始する対象会計年度から適用されています。今回のUTPRおよびQDMTTの適用開始により、第2の柱を構成する主要な3つのルールが全て日本で導入されることとなります。
OECD「Side-by-Sideパッケージ」合意と日本の対応:米国企業への影響
2026年1月5日には、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」において、グローバル・ミニマム課税と米国を含む特定の国の独自のミニマム課税制度との共存を目的とした「Side-by-Sideパッケージ」が合意・公表されました。この包括パッケージには、新たな4つのセーフハーバー導入と移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長が含まれています。特に「適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバー」は、適格なSide-by-Side制度を有する国・地域に最終親会社(UPE)を置く多国籍企業グループがこのセーフハーバーを選択した場合、IIRまたはUTPRのトップアップ税額がゼロとなるものです。
2026年1月5日時点で、このSbSセーフハーバーの適格要件を満たす国として、米国が唯一OECD中央記録で認定されています。この国際合意を受け、日本政府は2026年1月23日にグローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置を閣議決定しました。これにより、特定多国籍企業グループ等の最終親会社等が、財務大臣が指定する国際的に認められる要件(例:20%以上の税率で課税、または自国内ミニマム課税を課す)を満たす国・地域を所在地国とする場合、グループ国際最低課税額等をゼロとする適用免除基準が設けられることとなりました。米国のベッセント財務長官は、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明を2026年1月8日に発表しています。
多国籍企業に求められる実務対応と今後の課題
グローバル・ミニマム課税の導入と新たな国際合意は、多国籍企業に複雑な実務対応を求めています。専門機関であるPwC税理士法人、KPMG、デロイト トーマツ グループなどが公表した実務対応ガイドやニュースレターでは、企業が直面する課題について言及しています。
具体的には、複雑な法制度への対応、申告実務の準備、新たな情報収集体制の構築が不可欠とされています。また、外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しなど、関連する税制改正への留意も求められています。グローバル・ミニマム課税の適用がある企業は、CFC税制に加え、新たな申告納税義務が発生します。3月決算法人の場合、2025年3月期が最初の対象会計年度となり、2026年9月末までに最初の国際最低課税額確定申告書や特定多国籍企業グループ等報告事項等を提出する必要があります。2026年3月期決算においては、これらの新ルールが企業会計に与える影響についても税務上の留意事項として挙げられています。
[ Reference ]
- グローバル・ミニマム課税に係る実務対応ガイド | PwC Japanグループ
PwC税理士法人は2026年3月6日、グローバル・ミニマム課税(国際最低課税額に対する法人税)に関する実務対応ガイドを発行しました。このガイドは、2024年4月から日本で導入されたグローバル・ミニマム課税の制度内容と対応ポイントを整理しており、日本の法制度が2023年度税制改正で整備され、2024年度および2025年度税制改正で追加の法整備が行われたことを指摘しています。多くの日本企業は2024年度から決算・申告対応が求められており、複雑な法制度への早期対応準備が必要とされています。
- グローバル・ミニマム課税に関する令和7年度税制改正が施行(UTPR・QDMTT) | EY Japan
令和7年度税制改正に係る「所得税法等の一部を改正する法律」が2025年3月31日に公布され、原則として4月1日に施行されました。グローバル・ミニマム課税に関しては、軽課税所得ルール(UTPR)が「国際最低課税残余額に対する法人税」として、また国内ミニマム課税(QDMTT)が「国内最低課税額に対する法人税」として、2026年4月1日以後開始対象会計年度から適用されます。UTPRは、多国籍企業グループの構成会社等が所在する国の実効税率が基準税率(15%)を下回る場合に、所得合算ルール(IIR)による課税後の残余のトップアップ税額をUTPR導入国に所在する構成会社等に課税する制度です。QDMTTは、自国内の構成会社等について、他国のIIR/UTPRに優先して国内の実効税率が基準税率(15%)に達するまで課税する仕組みです。
- 2026年3月期決算における税務上の留意事項 - KPMG International
KPMGは2026年3月2日、2026年3月期決算における税務上の留意事項に関するニュースレターを公開しました。2025年度税制改正では、国際課税の分野で「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」についてOECDから公表されたガイダンス等を踏まえた見直しが行われ、事務負担軽減等の観点から外国子会社合算税制の見直しも行われました。
- 2026(R8)年3月決算における税務上の留意事項 | デロイト トーマツ グループ - Deloitte
デロイト トーマツ グループは2026年3月2日、2026年3月期決算における税務上の留意事項をまとめたJapan Tax Newsletterを発行しました。令和7年度税制改正では、国際課税の分野において、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられた「2本の柱」の解決策の実施に向けた取り組みとして、グローバル・ミニマム課税(第2の柱)について軽課税所得ルールおよび国内ミニマム課税の法制化が行われたことを指摘しています。
- グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置 - 財務省
財務省は2026年1月23日、グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置を閣議決定しました。これは、2026年1月5日にグローバル・ミニマム課税と独自のミニマム課税制度を有する米国を含む一定の要件を満たす国の制度との共存等について国際合意が成立したことを受けたものです。この措置には、特定多国籍企業グループ等の最終親会社等が、財務大臣が指定する国際的に認められる要件(例:20%以上の税率で課税、または自国内ミニマム課税を課す)を満たす国・地域を所在地国とする場合、グループ国際最低課税額等をゼロとする適用免除基準が設けられることが含まれます。
- OECD、第2の柱グローバル・ミニマム課税に関するSide-by-Sideパッケージを公表:詳細解説 - EY
OECDは2026年1月5日、グローバル・ミニマム課税のSide-by-Sideシステムに関する包括パッケージを公表しました。これには、新たな4つのセーフハーバー導入とCbCRセーフハーバーの1年延長が含まれます。Side-by-Sideセーフハーバーは、適格Side-by-Side制度を有する国・地域に最終親会社(UPE)を置くMNEグループがこのセーフハーバーを選択した場合、IIRまたはUTPRの対象とはならないと定めています。このセーフハーバーの適用は、2026年から各国・地域ごとに選択が可能となります。
- 2026年度税制改正大綱 速報 | PwC Japanグループ
PwC Japanグループは2025年12月19日に公表された令和8年度税制改正大綱の速報を2025年12月22日に発表しました。この大綱には、法人課税、国際課税など主要な改正事項が盛り込まれています。国際税務においては外国子会社合算税制の見直しが入っています。
- Revision of International Taxation [Explanation of the Outline of the FY2026 Tax Reform]
2026年2月4日に公開された動画では、令和8年度税制改正の概要として、外国子会社合算税制の見直しや外国組合員に対する課税の特例の見直しが解説されています。
- Worldwide Tax Summary 2026年2月号 | PwC Japanグループ
PwC Japanグループの「Worldwide Tax Summary 2026年2月号」(2026年2月20日発行)は、2026年1月5日にOECDが公表した第2の柱グローバルミニマム課税ルール(GloBEルール)に基づく新たな執行ガイダンスパッケージ「Side-by-Side Package」について詳述しています。このパッケージには、恒久的な簡易実効税率(ETR)セーフハーバー、移行期間国別報告(CbCR)セーフハーバーの1年延長、実質ベースインセンティブ(税恩典)セーフハーバー、適格国に係るSide-by-Side(SbS)セーフハーバーが含まれます。SbSセーフハーバーは、適格国・地域に本拠がある多国籍企業が一定の要件を満たせば、IIR/UTPRのトップアップ税額がゼロになるもので、2026年1月1日以降に開始する会計年度に適用されます。2026年1月5日現在、米国がOECD中央記録で適格要件を満たす唯一の国であるとされています。
- 2026年3月期の決算上の留意事項 -税務編- - YouTube
2026年3月30日に公開された動画では、2026年3月期の決算における税務上の留意事項として、中小企業向けの法人税率の見直しや、国際課税分野における外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直しが解説されています。
- グローバルミニマム課税(最低税率課税・pillar2) | 税理士法人山田&パートナーズ
グローバル・ミニマム課税(GloBEルール)は、年間連結売上高が約1,000億円以上の多国籍企業グループを対象とし、海外子会社等の実効税率が15%に満たない場合にトップアップ税額が上乗せされる制度です。日本では、グローバル・ミニマム課税と類似する制度として外国子会社合算税制(CFC税制)が存在し、今後グローバル・ミニマム課税の適用がある企業は、CFC税制に加え、新たな申告納税義務が発生します。
- グローバル・ミニマム課税 - 東京共同会計事務所
グローバル・ミニマム課税(Pillar II)は、全世界での年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業グループを対象に、各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する新たな国際課税ルールです。所得合算ルール(IIR)は日本でも導入され、2024年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されています。軽課税所得ルール(UTPR)と国内ミニマム課税(QDMTT)は、令和7年度税制改正で法制化され、2026年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用されます。
- グローバル・ミニマム課税関係 - 国税庁
国税庁は、グローバル・ミニマム課税に関する各種参考情報を随時掲載しています。令和5年度税制改正により所得合算ルール(IIR)に係る法制化が行われ、令和7年度税制改正において軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る法制化が行われました。
- OECDのSide-by-Sideパッケージ:第2の柱に関する3種類のセーフハーバー(簡素な実効税率、移行期間CbCR、租税優遇措置) | 著書/論文 | 長島・大野・常松法律事務所
長島・大野・常松法律事務所は2026年1月26日、OECDと包摂的枠組み(IF)が2026年1月5日に公表した「Side-by-Side Package」について解説しました。このパッケージには、簡素な実効税率セーフハーバー、移行期間CbCRセーフハーバーの1年延長、実質ベースの租税優遇措置に関するセーフハーバーが含まれており、「実質ベースの租税優遇措置に関するセーフハーバー」は2026年1月1日以後に開始する対象会計年度から適用可能です。
- グローバル・ミニマム課税で国際合意を踏まえた措置を閣議決定、米国に本社を置く多国籍企業などを適用外に - 税のしるべ 電子版
政府は2026年1月23日、グローバル・ミニマム課税に係る国際合意を踏まえた措置を閣議決定しました。これは、2026年1月5日にグローバル・ミニマム課税について米国に本社を置く多国籍企業などを適用外とする国際合意が成立したことを受けたものです。
- ベッセント米財務長官、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明発表(米国)
2026年1月8日、ベッセント米財務長官は、在米企業のグローバル・ミニマム課税適用外を歓迎する声明を発表しました。OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」を通じて、第2の柱であるグローバル・ミニマム課税(15%)について2021年10月に合意がなされていましたが、2026年1月5日時点で、Side-by-Sideセーフハーバー制度の適格国は米国のみとなっており、適用は2026年1月1日からです。
- BEPS2.0グローバル・ミニマム課税の仕組みと日本の法制化 - 響き税理士法人
BEPS2.0の第2の柱として導入されたグローバル・ミニマム課税は、年間総収入額が7.5億ユーロ(約1,200億円)以上の多国籍企業グループに対し、最低税率15%を確保する国際課税ルールです。日本では、2024年4月1日以降に開始する事業年度から「所得合算ルール(IIR)」が、2026年4月1日以降に開始する事業年度から「軽課税所得ルール(UTPR)」と「国内ミニマム課税(QDMTT)」がそれぞれ適用されます。3月決算法人の場合、2025年3月期が最初の対象会計年度であり、2026年9月末までに最初の国際最低課税額確定申告書や特定多国籍企業グループ等報告事項等を提出する必要があります。
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