北米における対外経済制裁と輸出規制の動向:2026年3月1日時点の主要な進展

カナダ、対中貿易関係の再活性化と輸出管理リストの更新

2026年3月1日、中国はカナダ産キャノーラミール、エンドウ豆、ロブスター、カニに対する差別的関税を2026年末まで停止し、キャノーラ種子への関税を14.9%に引き下げました。これに対応して、カナダは中国製電気自動車(EV)に6.1%の最恵国待遇関税率で49,000台の初期割当を導入し、特定の中国製鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税の免除を延長しました。

また、カナダは輸出管理リスト(ECL)ガイドの2026年1月版の改訂について登録NEXCOLユーザーに通知しました。この通知には、2026年3月31日から30日間の移行期間が設けられ、同年5月1日に発効することが含まれています。この改訂は、多国間輸出管理レジームにおけるカナダの最新のコミットメントを反映し、国内の管理を2026年1月1日時点の国際基準に合わせるものです。

サプライチェーンの安全保障を目的として貿易を制限する権限を政府に付与する輸出入許可法(EIPA)の改正法案(Bill C-15)は、2026年2月26日に下院で第3読会を通過しました。

米国、制裁政策の調整と貿易アジェンダの提示

米国通商代表部(USTR)は2026年3月1日、2026年貿易政策アジェンダと2025年年次報告書を議会に提出しました。アジェンダは、「アメリカ・ファースト」貿易政策の継続、互恵貿易協定(ART)プログラムの継続、貿易協定と米国貿易法の強力な執行、重要鉱物およびセクターのサプライチェーン確保、USMCAの見直し、中国との貿易の互恵性とバランスの管理、国際フォーラムでの米国利益の促進という6つの主要な焦点領域を提示しています。

法的な動きとして、2026年2月20日に米国最高裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA)が大統領に関税を課す権限を付与していないと判断し、IEEPAに基づいて課された全ての関税を無効としました。これにより、中国、カナダ、メキシコに対する関税を含むIEEPAに基づく関税が無効となります。

制裁政策においては、米国は2026年3月に、イラン戦争による世界的な原油価格高騰に対応するため、ロシア産およびイラン産原油・石油製品の輸送と販売に関する制裁を一時的に解除しました。一方で、2026年2月25日には、財務省外国資産管理局(OFAC)がイランの石油ネットワークと関連金融メカニズムを標的とした制裁を強化し、4個人、16団体、12隻の船舶をSDNリストに追加しています。

さらに、米国商務省産業安全保障局(BIS)が導入した、エンティティ・リストまたは軍事エンドユーザーリストに掲載された個人または組織が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「50%ルール」の執行は、対中貿易合意の一環として停止されています。

ロシアに対する北米の制裁強化動向

カナダは、2026年2月24日にロシアに対する制裁を拡大しました。これは、ロシアの金融・物資調達ネットワーク、軍事・デュアルユース技術開発支援団体、およびAI、サイバーセキュリティ、データ処理、デジタルインフラ分野でロシア国内で事業を行う団体を対象としています。また、制裁迂回やロシアのエネルギー産業を標的として、いわゆる「シャドー・フリート」に関連する船舶100隻を新たに制裁対象とし、ロシア産原油の価格上限を1バレルあたり47.60米ドルから44.10米ドルへ引き下げました。

米国も、世界的な原油価格高騰に対応するため2026年3月にロシア産原油・石油製品に対する制裁を一時的に解除しましたが、ロシアの有害な対外活動に対する制裁プログラム自体は継続しています。

[ Reference ]

  • March 2026 Monthly Sanctions and Export Controls Report - Institute for Financial Integrity
    2026年3月、米国はイラン戦争による世界的な原油価格高騰に対応するため、ロシア産およびイラン産原油・石油製品の輸送と販売に関する制裁を一時的に解除した。OFACはベネズエラ産石油・ガスに関する一般ライセンスの発行を継続し、制裁回避のための不正取引を検出する方法に関するガイダンスを公表した。EUとカナダはイランとロシアに対する新たな資産凍結を発表し、制裁を継続した。国連安保理のアルカイダ・ISIL制裁委員会は、ISILの幹部や資金管理担当者、中央アフリカのISILの金融仲介者など3名を制裁リストに追加した。EUは、サイバー攻撃を理由に中国のIntegrity Technology GroupとAnxun Information Technology、イランのEmennet Pasargadの3団体と2個人に制裁を課した。
  • Export and Import Controls - Global Affairs Canada
    2026年3月31日、カナダの輸出管理リスト(ECL)ガイドの改訂版が発効し、30日間の移行期間を経て2026年5月1日に施行される。この改訂は、多国間輸出管理レジームにおけるカナダの最新のコミットメントを反映し、国内の管理を2026年1月1日時点の国際基準に合わせるものである。
  • Canada's January 2026 Export Control List Guide Enters Into Force May 1, 2026
    カナダは、2026年1月版の輸出管理リスト(ECL)ガイドが2026年5月1日に発効することを登録NEXCOLユーザーに通知した。3月31日から30日間の移行期間が設けられ、この更新は2026年1月1日時点の多国間輸出管理レジームにおけるカナダの最新のコミットメントを反映している。
  • Canada secures renewed market access with China to boost exports and strengthen economic collaboration
    2026年3月1日より、中国はカナダ産キャノーラミール、エンドウ豆、ロブスター、カニに対する差別的関税を2026年末まで停止し、キャノーラ種子への関税を14.9%に引き下げた。カナダは、中国製電気自動車(EV)に6.1%の最恵国待遇関税率で49,000台の初期割当を導入し、特定の中国製鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税の免除を延長した。
  • Russia/Ukraine Sanctions Update - Month of March 2026 | Insights | Mayer Brown
    2026年3月5日、OFACはロシア産原油および石油製品の販売、配送、荷揚げに関する特定の取引を許可する一般ライセンスを修正した。ウクライナは2026年3月に59の法人と181の個人に対する制裁リストを延長した。ロシア中央銀行はEUによる資産凍結に対して欧州司法裁判所に提訴した。キルギスは、デュアルユース品のロシアへの再輸出疑惑でEUが制裁を課した場合、EUを提訴すると警告した。
  • Amend the Export and Import Permits Act to Restrict Trade for Security
    サプライチェーンの安全保障を目的として貿易を制限する権限を政府に付与する輸出入許可法(EIPA)の改正法案が、2026年3月23日に裁可された。この法案(Bill C-15)は、2026年2月26日に下院で第3読会を通過し、2026年3月10日に上院で第2読会を通過した。
  • Trump Gambled by Easing Oil Sanctions on Iran and Russia. Will It Pay Off?
    イラン戦争による世界的なエネルギー市場の混乱を受け、トランプ政権は2026年3月にイランとロシアに対する石油制裁を一時的に解除した。これにより、イランとロシアは追加の石油収入を得る可能性がある。ロシア産原油・石油製品の輸送・販売を許可する一般ライセンス134Aは3月19日に発行され、イラン産原油・石油製品の輸送・販売を許可する一般ライセンスUは3月20日に発行された。これらの免除は4月11日または4月19日に期限切れとなる。
  • Trump 2.0 tariff tracker - Trade Compliance Resource Hub
    2026年2月20日、米国最高裁判所は、国際緊急経済権限法(IEEPA)が大統領に関税を課す権限を付与していないと判断し、IEEPAに基づいて課された全ての関税を無効とした。
  • Sanctions Update: March 16, 2026 - Steptoe
    2026年3月12日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、ロシア関連の一般ライセンス134を発行し、3月12日までに船舶に積載されたロシア産原油および石油製品の販売、配送、荷揚げを許可した。この免除は4月11日まで有効である。EU理事会は、ウクライナの領土保全を損なう責任者に対する制限措置を2026年9月15日まで6ヶ月間延長した。
  • Sanctions Programs and Country Information | Office of Foreign Assets Control
    OFACは、資産凍結や貿易制限を用いて外交政策と国家安全保障の目標を達成するため、包括的または選択的な制裁プログラムを多数管理している。ロシアの有害な対外活動に対する制裁プログラムは2026年4月3日に更新された。
  • Newsletter - ベーカーマッケンジー
    2026年2月24日、カナダはロシアによるウクライナ全面侵攻開始から4年を迎えるにあたり、ロシアの金融・物資調達ネットワーク、軍事・両用技術開発支援団体、ウクライナの主権・領土保全を損なう活動に関連する多数の個人を制裁対象に追加した。また、AI、サイバーセキュリティ、データ処理、デジタルインフラ分野でロシア国内で事業を行う団体も制裁対象に追加され、制裁迂回やロシアのエネルギー産業を標的として、いわゆるシャドー・フリート関連の船舶100隻を新たに制裁対象とし、ロシア産原油の価格上限を1バレルあたり47.60米ドルから44.10米ドルへ引き下げた。2026年2月18日、カナダ政府は「対シリア特別経済措置規則」の改正を公表し、旧アサド政権に関連する広範な経済制裁措置を解除し、貿易、投資、金融サービス等に対する制限を緩和した。同時に、重大な人権侵害やシリアの平和・安全・安定を損なう活動に関与した個人や団体を制裁対象とする新たな基準を公表し、これに基づき4個人と2個人が追加指定された。
  • The new US export control rule that could impact trading with thousands of entities - Moody's
    米国商務省産業安全保障局(BIS)は、輸出管理を強化するため、エンティティ・リストまたは軍事エンドユーザーリストに掲載された個人または組織が50%以上所有する事業体も輸出管理の対象とする「BIS 50%ルール」を導入した。しかし、対中貿易合意の一環として、米国政府はこのルールの執行を2026年11月10日まで停止している。
  • Key U.S. Regulatory Actions Affecting Global Shipping – March 2026 | Eckert Seamans
    2026年2月28日の「オペレーション・エピック・フューリー」開始前後、米国政府はイランに対する制裁と「シャドー・フリート」に対する措置を強化した。2026年2月6日、トランプ大統領はイラン政府による米国への脅威に対処する大統領令を発令し、イランから物品・サービスを直接的または間接的に購入する国に追加輸入関税を課す関税制度を確立した。2026年2月25日、OFACはイランの石油ネットワークと関連金融メカニズムを標的とした制裁を強化し、4個人、16団体、12隻の船舶をSDNリストに追加した。
  • What Happened This Month in International Trade (March 2026)
    2026年3月4日、国際貿易裁判所はIEEPA関税の還付を命じる詳細な命令を発行した。この命令は、CBPが還付プロセスを実装する時間を確保するために一時停止され、後にブラジルとインドのIEEPA関税を含むように修正された。
  • USTR submits 2026 Trade Policy Agenda - Feedstuffs
    2026年3月1日(3月4日提出)、米国通商代表部(USTR)はトランプ大統領の2026年貿易政策アジェンダと2025年年次報告書を議会に提出した。2026年には、トランプ政権は「アメリカ・ファースト貿易政策を倍増させ、2025年の成果を活かし、国内生産者と米国経済の勢いを維持する」と述べた。アジェンダは、互恵貿易協定(ART)プログラムの継続、貿易協定と米国貿易法の強力な執行、重要鉱物およびセクターのサプライチェーン確保、USMCAの見直し、中国との貿易の互恵性とバランスの管理、国際フォーラムでの米国利益の促進という6つの主要な焦点領域を提示している。
  • 米国、タンカー積載済みロシア産石油に対する制裁を1か月間停止 - ウクルインフォルム通信
    2026年3月12日、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、ロシア関連の一般ライセンス134号を発行し、3月12日までに船舶に積載されたロシア連邦原産の原油および石油製品の配送と販売を許可した。この措置は、イラン戦争を背景とした価格高騰を防ぎ、世界のエネルギー市場の安定を維持することを目的としている。
  • 米国経済マンスリー:2026年3月 ~スタグフレーションのリスクはまだ小さい~ | 前田 和馬
    2026年3月4日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を巡り、米国際貿易裁判所はトランプ政権に還付金を再計算するよう命令した。還付対象は全ての輸入業者に及び、企業が返還訴訟を行う必要はないとみられる。
  • EU、英国、米国による制裁に関する最新情報 | NorthStandard | Marine Insurance
    EU、英国、米国は、2025年10月と11月にロシアに対する新たな制限と対象の指定を導入した。主要な共通項目として、ロシアのエネルギー部門、特にLNGと大手石油会社を標的とした制裁の連携強化、シャドー・フリートの活動と制裁回避を支援する第三国支援者に対する監視強化、制裁迂回を防止するための輸出規制拡大と金融的措置強化が挙げられる。
  • Global Legal Update Vol. 125 | 2026年3月号 - Jones Day
    2026年2月20日、米国最高裁判所は、大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき関税を賦課する権限を有しないとの判断を下した。この判決により、中国、カナダ、メキシコに対する関税を含むIEEPAに基づく関税は無効となる。
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