グローバルサウスの重要鉱物資源市場における地政学的動向:米国のサプライチェーン再編と資源国の台頭

グローバルサウスを巡る重要鉱物資源の新たな動き:米国の市場再編とアフリカの存在感

2026年2月26日、米国通商代表部(USTR)は、重要鉱物に関する複数国間協定の設計とサプライチェーンの強靭化に向けたパブリックコメントの募集を開始しました。USTRは、重要鉱物の輸入依存度の高さと、非市場的政策や慣行による供給拡大への取り組みの阻害を課題と位置付けています。

同時期に、2026年2月27日にはアフリカ最大の鉱業会議「マイニング・インダバ2026」が開催され、コンゴ民主共和国、ザンビア、ナミビア、南アフリカ共和国などのアフリカ資源国の存在感が高まりました。この会議は、再生可能エネルギーやデジタル技術への世界的な移行に伴う重要鉱物(銅、コバルト、ニッケル、リチウムなど)の新たな争奪戦の中で、鉱物サプライチェーンの将来を形作る上で重要な役割を果たすとされています。

また、2026年2月23日にはインドとブラジルがニューデリーでレアアースおよび重要鉱物に関する覚書(MoU)を正式に締結しました。これは、グローバルサウスの二大民主主義国間での強靭な貿易を深化させる広範な取り組みの一環として提示され、戦略的自律性を高めるための水平的ネットワーク構築を示しています。これらの動きは、グローバルな重要鉱物資源の権益争奪と国家間連携の新たな局面を示唆しています。

先進国の戦略:米国主導のサプライチェーン再編と日本・欧州の連携

米国は、2026年2月4日にワシントンD.C.で「2026年重要鉱物閣僚会合」を開催し、54カ国および欧州委員会代表を招集して重要鉱物およびレアアースの世界市場再構築を打ち出しました。この会合で、米国は鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)の後継として「資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)」の創設を発表しました。米国はアルゼンチン、クック諸島、エクアドルなど11カ国と二国間重要鉱物枠組みまたは覚書(MOU)を締結しており、特にアルゼンチンは銅、リチウムなどの重要鉱物の貿易パートナーとして米国を優先することにコミットしています。米国は2026年3月までにグローバルサウス諸国とのパートナーシップを強化し、FORGEイニシアチブを推進しており、サプライチェーンの脆弱性を低減し、中国の市場影響力に対抗するための外交関係と提携構築に重点を置いています。

重要鉱物閣僚会合において、米国、欧州連合、日本は、重要鉱物サプライチェーンの強靭性を共同で強化することにより、経済安全保障および安全保障の増進に向けて大きな進展を遂げていると表明しました。これら3者は、互恵的なパートナーシップのための協調的取り組みを加速する姿勢を示し、国境で調整される価格フロアや基準に基づく市場などの複数国間貿易イニシアティブを探求する行動計画の策定に焦点を当てています。

また、2026年2月2日には、トランプ米大統領が民間企業向けに120億ドル(約1兆9000億円)規模の重要鉱物備蓄制度の創設を発表しました。これは、レアアースなどの分野で中国への依存度を下げることを目的としています。2026年2月5日には、米国は各国に対し、関税なしで重要鉱物を売買できるゾーンを提供し、最低価格を保証することで中国の生産者と競争し、より強靭なサプライチェーンを構築することを目指す重要鉱物貿易圏の形成を促しています。

グローバルサウスの台頭:資源国による価値連鎖向上と域内連携

アフリカや南米のグローバルサウス諸国は、単なる原材料供給国から脱却し、自国での加工・精製能力向上を目指す動きを強めています。2026年2月7日、コンゴ民主共和国(DRC)のチセケディ大統領は、コバルト、コルタン、リチウムを「戦略的鉱物」に指定する大統領令に署名しました。これにより、重要鉱物の輸出管理と国内加工義務が強化され、5年以内に国内精錬・加工施設への投資が義務付けられることになります。また、南アフリカでは2025年5月に内閣が「重要鉱物・金属戦略」を承認しており、規制改革、インフラ投資、探査奨励、スキル開発を通じて2.5兆ドル以上の鉱物資源を最大限に活用することを目指しています。アフリカ諸国全体として、重要鉱物の現地加工や二国間協力、サプライチェーンの透明性確保を通して、自国資源の活用と経済効果の最大化を目指す姿勢が見られます。

グローバルサウス内での連携も強化されており、2026年2月23日にはインドとブラジルがレアアースおよび重要鉱物に関する覚書(MoU)を締結しました。これは、両国間の強靭な貿易を深化させ、戦略的自律性を高めるための水平的ネットワーク構築を推進するものです。米国も南米の重要鉱物資源に注目し、ブラジルとアルゼンチンを戦略の中心に置いています。

中国の重要鉱物加工における支配は、グローバルサウスにとって「世代で最も重要な経済的・戦略的機会」をもたらしています。これまで未加工の鉱石を中国に輸出していたリチウム、コバルト、グラファイトが豊富な国々は、西側諸国の多様化への動きや新たなパートナーシップの機会により、このモデルの変化の圧力を受けています。これらの動きは、先進国からの投資誘致と同時に、自国の資源主権を強化しようとするグローバルサウスの意図を反映しているとみられます。

市場の課題と展望:需要増大、地政学的リスク、ESGへの配慮

グローバルなエネルギー転換と技術革新は、リチウム、コバルト、銅、ニッケル、レアアースなどの重要鉱物に対する需要を牽引しています。しかし、供給リスクとして、特定の国による独占、地政学的リスク、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する懸念がサプライチェーンの脆弱性を高めています。

2026年2月15日の報告によると、中国は世界の重要鉱物・レアアース生産国として輸出規制を急増させており、これが世界のサプライチェーンに代替供給源確保の圧力をかけています。中国は多くの鉱物の採掘・抽出を支配しており、特にガリウムのような精錬・加工工程での依存度が極めて高い状況です。2026年3月のジェトロの特集記事も、中国のレアアース輸出管理が経済安全保障リスクを高めていると指摘し、各国・地域が自律性向上と不可欠性確保に向けた戦略を模索していることを伝えています。

このような中国の市場支配に対し、米国はグローバルサウス諸国との外交関係と提携構築を通じて市場影響力に対抗する戦略を推進しています。しかし、2026年3月のコバルト市場では、コンゴ民主共和国(DRC)による輸出割当開始から半年近くが経過し供給縮小へのショックは消化されたものの、電気自動車(EV)の販売低迷を背景に電池向け需要の縮小が意識されており、需要低迷への懸念が強い状況です。

今後の市場動向では、サプライチェーンの脆弱性に対応するため、供給源の多様化が成長の鍵となるとみられます。

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