グローバルサウス貿易環境の最新動向:地域統合の進展と地政学的リスクの深化

導入:グローバルサウス貿易の新たな局面

2026年2月末から3月初頭にかけて、グローバルサウスの貿易環境は二つの重要な局面を迎えた。一つは、EU-Mercosur協定の批准と暫定適用であり、もう一つはホルムズ海峡における貿易の混乱である。2026年2月26日にはアルゼンチンが、翌27日にはウルグアイがEU-Mercosur協定を批准し、同日欧州委員会は協定の暫定適用を発表した。この協定は、2026年1月17日にパートナーシップ協定および暫定貿易協定として署名されたものである。他方、2026年2月28日のエスカレーションによりホルムズ海峡の海上交通はほぼ完全に途絶し、原油価格は急騰、2026年の世界貿易の減速が予測されている。2月には1日平均129隻だった船舶の通過が3月には6隻に激減し、95%の減少を記録した。これらの事象は、グローバルサウスにおける地域経済統合の進展と、世界的な貿易環境に内在する地政学的リスクがもたらす影響の大きさを顕在化させている。

地域経済共同体の進展と課題:AfCFTAとMercosurの動向

グローバルサウスの地域経済共同体では、統合の進展と同時に課題も浮上している。EU-Mercosur貿易協定は、2026年1月17日の署名を経て、2月26日にアルゼンチン、2月27日にウルグアイが批准し、同日欧州委員会による暫定適用が発表された。欧州委員会委員長は2月にこの暫定実施を公表しており、この協定は7億人の貿易圏を創出し、EUのGDPを776億ユーロ以上増加させ、年間輸出を39%増加させると予測されている。特に、自動車や機械などの工業製品の関税を最大35%削減し、EUの農業輸出も約50%増加が見込まれる。同時に、2026年2月10日には欧州議会がEU農業部門を市場混乱から保護するための強化されたセーフガード条項を承認している。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)においては、2026年2月が交渉枠組みから実施加速へと焦点を移す重要な転換点となった。2月中旬のアフリカ連合(AU)総会第39回通常会合では、AfCFTAの実施推進が強調され、ハイレベル実施委員会が設立された。国連アフリカ経済委員会(ECA)は、AfCFTAの実施と運用をさらに進めるため、2月19日から20日にかけてナイロビで「アフリカ域内貿易における情報障壁への対処:AfCFTAの下での貿易に関するステップバイステップガイド」に関するワークショップを開催した。2月23日にアディスアベバで閉幕したアフリカビジネスフォーラム2026では、AfCFTAの完全な実現がアフリカ産業の構造的基盤として位置づけられた一方、関税・非関税障壁、物流のボトルネック、規制の不整合が依然として課題として認識されている。また、2月25日から26日にはアフリカ貿易担当大臣がモザンビークのマプトで会合を開き、農業、食料安全保障、開発がアフリカの中心的優先事項であることを再確認した。

貿易障壁の推移と新たな地政学的リスク:ホルムズ海峡の混乱と保護主義の台頭

世界的な貿易環境は、地政学的リスクの深化と保護主義の台頭により、新たな課題に直面している。特に、2026年2月28日のエスカレーションにより、ホルムズ海峡の海上交通がほぼ完全に途絶した事態は、世界の貿易フローとエネルギー価格に大きな影響を与えている。この結果、原油価格は急騰し、2026年の世界貿易の減速が予測されている。2月の1日平均129隻だった船舶の通過は、3月には6隻にまで激減し、95%の減少を記録した。このような混乱は、途上国の脆弱性を増大させる懸念がある。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、2026年の世界経済成長率が2.6%で停滞すると予測し、保護主義的政策と差別的な貿易措置の増加が途上国の脆弱性をさらに高めると警告している。これに伴い、輸出管理と許認可制度は厳格化され、サプライチェーンの分断を引き起こしている。デジタルサービス貿易は依然として成長しているものの、デジタルデバイドは顕著であり、新たな障壁が出現している状況である。

グローバルサウスの貿易戦略と多角化の動き:BRICSと南南貿易の深化

グローバルサウス諸国は、不確実性の高まる国際貿易環境において、経済的自立と貿易多角化を目的とした戦略を推進している。BRICSは、2026年1月1日にインドが議長国に就任し、「レジリエンス、イノベーション、協力、持続可能性の構築」をテーマに掲げた。2026年の第18回BRICSサミットでは、経済的自立の強化と多極的な金融システムの発展が主要な焦点となり、貿易における自国通貨利用の拡大や金裏付け金融メカニズムの模索が計画されている。

このような動きは、南南貿易の加速という広範なトレンドと一致する。南南貿易における商品輸出は、1995年の0.5兆ドルから2025年には6.8兆ドルへと急増し、途上国の輸出の57%が他の途上国市場向けとなっている。この南南連携の深化により、貿易回廊は再編され、新興市場は伝統的な西側諸国への依存度を低減している。個別の国では、ペルーが2026年に輸出目標を1,000億ドルに設定し、2026年1月にはデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)に加盟するなど、積極的な貿易戦略を展開している。

結論:不確実性の中での地域協力の重要性

現在のグローバルサウスの貿易環境は、地域経済統合の進展と、地政学的リスクの増大や保護主義の台頭といった不確実性が複雑に絡み合っている。EU-Mercosur協定の暫定適用やAfCFTAの実施加速に見られる地域経済共同体の発展は、貿易障壁の削減と経済成長の促進に寄与する可能性を秘めている。一方で、ホルムズ海峡の混乱やUNCTADが指摘する世界経済成長の停滞は、新たな貿易障壁とサプライチェーンの分断を引き起こし、途上国の脆弱性を高めるリスクをはらんでいる。

このような状況下において、BRICSが推進する経済的自立の強化や南南貿易の深化は、グローバルサウス諸国が伝統的な貿易構造への依存度を低減し、経済的レジリエンスを構築するための重要な戦略となる。地域経済共同体を通じた協力と、多角的な貿易関係の構築は、不確実性の時代において持続可能な成長を実現するための不可欠な要素であると言える。

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