中東情勢緊迫化とOPECプラス戦略転換:グローバルエネルギー市場と資源ナショナリズムの動向

ホルムズ海峡の緊迫化とOPECプラスの生産戦略転換

2026年2月28日、米国とイスラエルによるイラン攻撃が開始され、これに対しイランはイスラエルおよび周辺中東諸国へ攻撃を実施しました。この情勢緊迫化により、原油や天然ガスの輸送の要衝であるホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥っています。イラン国内メディアは同日、イラン・イスラム革命防衛隊がホルムズ海峡の船舶に対し、いかなる船舶の通過も許されないとの通告を行ったと報じました。

ホルムズ海峡は世界の石油消費量の約2割に当たる原油が通過する資源物流の要衝であり、国際エネルギー機関(IEA)は現在の状況を「世界の石油市場史上、最大の供給ショック」と定義しています。2026年3月現在、海峡の通過量は紛争前の水準から90%以上減少し、日量150万バレル以下にまで落ち込んでいると推定されています。この混乱により、2026年3月のOPEC総石油生産量は日量730万バレル減少し、パンデミック発生以来の最低水準となる日量2157万バレルに急落しました。特にイラク、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦といった主要産油国で生産量が大幅に減少しています。

このような中、OPECプラスの8カ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は2026年3月1日に会合を開き、2026年4月の原油生産量を日量20万6,000バレル増加させることを決定しました。これは、2026年1月から3月まで一時停止していた自主的追加減産(合計日量165万バレル)の縮小を再開するものです。この決定は、2026年1月以降の原油価格上昇傾向の中で行われました。2月23日時点の原油価格は、米WTIが1バレル当たり66.36ドル、北海ブレントが71.9ドルでした。OPECプラスは、2025年11月に2026年1月から3月までの増産一時停止で合意し、2月1日の会合でも3月の産油量維持を承認していました。

資源ナショナリズムの台頭と供給網の脆弱性

ホルムズ海峡危機は、資源ナショナリズムの顕在化と、グローバルなエネルギー供給網の脆弱性を浮き彫りにしました。イランによるホルムズ海峡封鎖の通告は、資源国が自国の資源に対する管理を強める動きの一例として挙げられます。

これに関連して、中国商務部は2026年1月1日から銀の輸出に新たな許可制度を導入しており、これにより世界の銀供給が60-70%削減される見込みです。また、中国政府は2025年にタングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなどの重要鉱物に対する輸出管理を強化しました。中国の重要鉱物分野における支配的地位は、米国の国防・テクノロジー産業のサプライチェーンに深刻な影響を与え続けており、輸出制限は航空宇宙、国防、半導体、電気自動車(EV)の各業界に及んでいます。これらの事例は、資源国が戦略的資源の管理を強化する傾向が世界経済に広範な影響を与えることを示しています。

産油国・消費国の輸出入戦略の多様化と課題

中東情勢の緊迫化と資源ナショナリズムの高まりを受け、産油国および消費国はそれぞれ輸出入戦略の多様化を模索しています。

産油国側では、サウジアラビアの東西パイプライン「ペトロライン」が、ホルムズ海峡の封鎖に対する部分的な代替手段として原油を輸送しています。このパイプラインは最大で日量700万バレルの容量を持ち、そのうち約500万バレル/日は輸出向けとされています。

消費国側では、日本がエネルギー供給の中東依存度を低減するため、アラスカ産原油の確保を検討しています。日米首脳会談では、日本側が投資資金を出し、増産分を買い取る案などが協議されています。また、資源に乏しい日本にとって、食料・資源・エネルギーが豊富で高い成長力を持つグローバルサウス諸国との連携強化が不可欠とされており、経団連は2025年12月16日に「グローバルサウスとの連携強化に向けて」と題する提言を公表しています。経済産業省の荒井勝喜・通商政策局長も、資源や重要物資の調達が途絶した場合の日本経済への打撃を鑑み、グローバルサウスとの連携が不可欠であると述べています。

しかし、これらの多様化戦略は課題に直面しています。例えば、アラスカ産原油の調達は、米国本土よりも日本からの距離が近く輸入コスト削減のメリットがある一方で、米国政府がアラスカ産原油の輸出拡大を日本に認めるか不透明であり、開発投資などで相当の見返りを求める可能性も指摘されています。

[ Reference ]

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