EU、産業加速法案(IAA)とCBAM本格運用で産業競争力強化と脱炭素化を両立:サプライチェーン・投資環境への影響分析

EU産業加速法案(IAA)の提出:域内産業強化と脱炭素化の両立を目指す

欧州委員会は2026年3月4日、「産業加速法案(Industrial Accelerator Act, IAA)」を提出しました。この法案は、EU域内産業基盤の強化、戦略的自律性の向上、そして脱炭素化の加速を主目的としています。特に、政府契約や公的資金を、欧州を拠点とする自動車、クリーンテクノロジー、鉄鋼、アルミニウム、セメント、化学品といった特定の戦略的セクターの製造企業に誘導することを意図しています。具体的には、公共調達や公的支援制度において「Made in EU」および低炭素要件を導入し、低炭素産業製品の市場需要を刺激する需要側措置を導入しています。さらに、戦略的セクターへの外国直接投資に対しては、EU内での産業的利益を最大化するための条件を設ける方針です。欧州委員会は、この法案を通じて製造業のEU GDPに占める割合を2035年までに少なくとも20%に引き上げるという「産業化目標」を掲げており、許可手続きの迅速化も目指すことで、域内産業の経済的競争力向上を図っています。

CBAM本格運用開始と適用範囲拡大の動向:炭素漏洩防止と貿易への影響

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)は2026年1月1日から本格運用段階に入り、セメント、鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素といった初期対象品目に対し、炭素関連料金の適用が始まりました。これにより、対象製品をEUに輸入する企業には既に炭素コストが発生しています。2025年12月17日には、欧州委員会がCBAMの適用範囲を約180品目の下流製品(主に鉄鋼・アルミニウム集約型製品)に拡大する改革案を提案しました。CBAM証明書の販売開始は2026年1月1日から2027年2月1日に延期されたものの、2026年輸入分については遡及的に完全な遵守義務が適用されることになっています。また、2026年2月24日には、CBAMの適用除外を可能にする「緊急ブレーキ」条項(Article 27a)に関する欧州委員会の提案が議論されました。これらの動向は、炭素漏洩防止というCBAMの本来の目的と国際貿易ルールとの整合性、そして産業界が直面する不確実性について、継続的な課題を提起しています。

環境規制の簡素化と持続可能性報告の動向:企業負担軽減への配慮

EU理事会は2026年2月24日、企業持続可能性報告指令(CSRD)および企業持続可能性デューデリジェンス指令(CS3D)の簡素化パッケージに最終承認を与え、これらの規制の適用範囲が縮小されました。この措置は、一部企業の規制遵守負担を軽減することを目的としており、EUの環境規制アプローチにおける柔軟性や実用性への配慮を示すものと分析されます。また、欧州連合森林破壊防止規則(EUDR)の実施日は2026年12月30日に延期され、2025年の改正では下流事業者や小規模・零細な一次事業者向けの簡素化措置が導入されました。これらの動きは、EUが環境目標の達成と産業界の実行可能性との間でバランスを取ろうとしていることを示唆しています。

[ Reference ]

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